福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -026/042page

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4.各研究部の実践
(1) 生徒理解研究部
 1 研究の視点
  生徒理解が行き渡れば,個々の生徒に適し た援助,指導は可能となり,自ら学びとる態 度の育成が期待できる。

 2 視点についての考え方
  生徒指導を進めるうえで最も基本となるも のは,一人一人の生徒をとりまく諸条件をい ろいろな角度からとらえ,それをもとに,ど のように生徒を理解するかにあると思う。と するならば個々の生徒を理解するためのアプ ローチとして,共感的理解と客観的理解の併 用があげられる。
  前者は生徒とのふれ合いを重視し,教師と 生徒が互いに相手を内包し合う姿勢,親和的 な態度,心的作用の把握に役立ち,後者は, 実態調査などによって生徒のある面を的確に とらえることができる。

 こうした認識にたって本校では次のことがらを実践,現在継続中である。
ア、共感的理解を深めるために
    ・ 生徒が積極的に教育相談にのぞむよう にするための工夫
    ・ 相談したい先生を生徒が選ぶ教育相談
    ・ 不得意教科,教科学習上の悩みを解 消するための教育相談
    ・ 生徒に対する話しかけ運動の展開
      愛することは理解することであると いわれるが,相手を理解する手段とし て最も簡単なのは話しかけ,話し合 うことである。私たちは,生徒あって の教師であるという現実をふまえ,全 職員ができるだけ多くの生徒に接し, 話しかける機会をもつことにした。

 イ、客観的理解を深めるために
    ・AAIテスト,Step(生徒理解のための 総合調査),標準学力テスト
    ・ 上記の諸検査結果が一枚の用紙で全容 がわかる個人カードの作成

3 研究の概要
 <話しかけ運動の実践例>
 生徒に対し,今まで通りの接し方で,1週 間,話しかけた回数を記録する。
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 記録するために全職員が,全校生徒の学級 名簿をもつ。
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  記入のしかたは,話しかけるどとに,○印 などでチェックをする。
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  話しかけるということは,単なるあいさつ だけでなく,会話がとりかわされた場合をい う。(授業中の指名,部活動の指導,登下校 など。)

・ 話しかけた回数で集計した結果,多い生徒 で60回以上8名で1日平均10回であった。
・ 少なかった生徒については職員協議会で原因を検討し,20回以下の生徒,1年16名,2年12名,3年27名を選びだし,10月,11月の2ケ月間全職員が意図的に話しかけ,ふれあいの機会を多くすることを確認した。
・ 問題傾向をもつ生徒と話しかけ回数の関係だが,常に注意とか指導といった面で多く接しているせいか,話しかけも多くなっている。
・ 特に問題はないと思われている生徒に対しては,案外話しかけ回数が少ない。そんな生徒ほど問題ではないか。そういう生徒が9〜10名いる。

4 研究の成果と今後の問題点
 ア Step(総合調査)によって日ごろ特に問 題がない生徒の中に指導を要する事項が見 つかり,早期教育相談などで適切な対策が 講じられた。
 イ 生徒が先生を選ぶ教育相談の手続きには まだ技術的な問題はあるが生徒には好評で あった。
 ウ 話しかけ運動は理屈ぬきにいいことであ ることが確認された。話しかけられたこと によって,文句なく生徒は一人前に認めら れたことになる。今後も工夫をこらして実 施していきたい。


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