福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -029/042page

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アイディア紹介

自作簡易電極を使った理科授業

会津若松市立大戸中学校教諭  渡 部 裕 二

1.はじめに
 理科学習における,物質とイオンの単元は,物質についての巨視的な見方や考え方及びイオンの概念を導入しての微視的な見方や考え方を深めることをねらいとしている。
 イオンの概念を理解させる方法として,従来の実験では,炭素棒電極やステンレス電極を用いて電解質の電流測定や塩化鋼の電気分解を行ってきた。しかし,配線に手間がかかることと,測定に参加しない生徒が見られたため,配線の手間を省き,生徒一人一人が,実験に参加できる簡易な装置を試作し,授業を行ってみた。

2.自作簡易電極を使った授業
(1)使用目的と構造
  本器は,通電測定と塩化鋼の電気分解を行う目的で作製した。
  構造は,小型電流計と発光ダイオードを下記のように,電池と電極に接続させたものを,1つのケースにまとめたものである。

小型電流計と発光ダイオード

(2)留意点
  この装置は,配線の手間を省き,簡単に操作測定ができ,わずかな電流も測定できるよう工夫した。また,塩化銅の電気分解による銅の析出と塩素の発生を確かめる場面にも用いることができるよう次の点に留意した。
 1 電極は,乾電池の炭素棒を用い,とりはずしができるようにした。
 2 電流計は,A計でもよいが,微少電流も測定できるようmA計を用いた。
 3 発光ダイオードを用い,微少電流を明るさで確認できるようにした。
 4 電極の十,一逆転スイッチをつけ,+・−極を交代できるようにした。
 5 容器は,ポリエチレンのべんとう箱(110o×65o×35o)を用いた。

3.自作簡易電極の使用計画例
 (1) 指導計画
   本器を使用させる場面を,指導計画の中に,次のように位置づけた。

学習内容・活動 時間 使用場面 指導要領関連
1.水溶液には電流が流れるかどうか調べる 2 ・固体や液体の物質に電流が流れるかどうか調べる。

・溶液にした場合、電流が流れるかどうか調べる。

第一分野(5)・イ、イオン(ア)水溶液には電流が流れないものがある。
2.塩化銅水溶液に電流が流れると,どんな変化が見られるか観察する。 2

 

・塩化銅水溶液の+−極の変化を観察する。

・+−極を交代して変化を観察する。

(5)イ、イオン(イ)電解質の水溶液は,電流によって電解質が分解される。
3.水溶液に流れる電流の正体は何か,理解する。 5   (5)・イ、イオン(イ)(エ)
4.水溶液が酸性やアルカリ性を示すもとになるのは何か理解する。 4 ・塩酸,硫酸,酢酸の通電性を調べる。 (5)・ウ、酸,アルカリ,塩

(ア)酸とアルカリの特性は,水素イオンと水酸化物イオンで説明できる。

(2) 実践例
 1 電解質と非電解質
  ア 指導内容
   ア 卵のカラパックに,塩化ナトリウム,砂糖,塩化銅,アンモニア水,塩酸,エタノール,水道水と蒸留水などを入れ,本器を用いて,通電性を調べさせる。電流の大きさの違いは,電流計の値と,発光ダイオードの明るさによって知ることができる。
   イ 測定後,蒸留水を加えて,水溶液にし同様の測定を実施させ,電解質と非電解質について理解させる。なお,塩化銅を


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