福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -031/042page

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アイディア紹介

「階名カード」を活用した創作の指導

郡山市立安積第三小学校 教諭   渡辺 嗣雄

1.はじめに
 音楽科の学習における創作の指導は,1.2年の段階から「即興的にリズムや旋律を工夫して表現すること」をねらいとし,それぞれの学年の学習体験を発展させ,歌ったり,楽器を演奏したりし高学年においては即興的にまとまりのある旋律を作り表現することができる能力を育てていくことを目指している。そして,表現の実際に当たっては,児童一人一人が楽しく,即興性を発揮できるよう指導の工夫を加えていくことが望まれている。
 ところで,本校4年の児童は,旋律を表現することにあまり興味を示さないようである。その主な理由として次のようなことが考えられる。

(1) 楽譜を読んだり,書いたりすることが不慣れなため創作は難かしいものと思っている。
(2) 旋律の最初の音が思うように浮かんでこない。
(3) リズム打ち,リズム唱が正確にできない。
(4) 音楽のきまりの理解が不足し,結果として創作したものを記譜して表せない。
(5) 即興的表現は恥ずかしくてできない。
 中でも特に(1),(2)については,児童が自由に旋律を創作することができない大きな原因になっていると思われる。そこで,楽譜に対する関心を持たせながら創作意欲を高めていくため,「階名カード」を利用した創作指導を試みた。

2.楽譜に親しみをもち,創作するために
 創作をする場合,まず創作してみようという意欲をもたせなければならない。そのための一つの方法として,ドからドまでの「階名カード」を自作させ,それを使って小節の初めの音を選ばせその音を手がかりに自由に創作させる方法を考えた。
 つまり,創作するために,「階名カード」を作ることや旋律を作るためにそのカードで小節の初めの音を自分で選び出すということが創作の意欲を高めることに結びつくと思ったからである。
  また,自作のカードを用い創作することは,遊びの中で五線譜に親しむことにもなる。
 このような創作を重ねることにより,詩に旋律をつけることも抵抗なくできるよう・になるものと思う。

3.創作指導の実際
 (1) 準備するもの
 1 ドからドまでの「階名カード」
    上質の厚紙に階名を書いて作る。
   ア 大きさは市販のトランプぐらいとする。
   イ 色 白色のカード ド、ミ、ソ、ド
       黄色のカード ファ、ラ
       青色のカード レ、シ
   ウ デザインは児童に工夫させる。
2 五線紙
3 旋律楽器(たて笛,鍵盤ハーモニカ,オルガン,電子楽器)

(2) 創作するときのきまり 1 調は,ハ長調とする。
 2 小節の初めの音を選び出したら自由に表現し,前後の小節の旋律の関係を考慮しながら順に創作をする。
 3 和音を考えて色別カードの使う小節を指定する。カードを使って音を選び出す小節を少しずつ減らしていく。
 4 最終的には,1小節の初めの音だけ選び出し,その続きは全部創作する。

(3) 創作の手順
 1 階名カードを活用して創作をする方法
<創作例No.1>
創作例No.1

ア 1小節めの初めの音を白い階名カード(ド,ミ,ソ,ド)の中から好きな音を選び出し,五線紙に書き込む。
イ 選び出した音から声や旋律楽器で自由に 表現する。
ウ 2小節の初めの音を白い階名カードの中から好きな音を選び出し,五線紙に書きこむ。
エ イと同じ方法で自由に表現する。
オ 1小節と2小節を続けて何度も表現してみる。


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