福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -034/042page

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2ねらい
  重心訪問部の児童生徒のはとんどは感覚運動期・知覚運動期の発達段階にいる。
  さらに上の段階で獲得させる時,感覚運動を十分に獲得している必要がある。これは外界への適応という点からいって段階をおさえない上位レベルの獲得は発達全体としてのバランスを欠き,外界への適応困難をきたすからである。
・外界からの刺激を容易にするための一つの手だてとして情緒を安定させる。
・脳の前庭感覚を高める。
・安定性がある。
・児童生徒の障害状況にあった様々な体位で利用できる。

3設計の概要
  「クローリングジャケット」では安全性の問題もあってタイヤを使用した。それに4本のロープで固定しロープの中間で工業用ワイヤー留め具で一本にまとめ,更に,天井には工業用クレーンの金具をとりつけ,取りはずしを自由にした。また,視覚的刺激を与えるためにタイヤをブルーのペンキでぬった。

クローリングタイヤ

4指導方法と効果
  タイヤを使用しているため安定感があり座位でも腹臥位,仰臥位でも乗ることができる。このクローリングタイヤで様々なゆれ(前後,左右,回転)を試みることにより伸展位を引き出すことができたり,前庭系への刺激を通して前庭感覚が高められていく。また,様々なゆれが情緒の安定をもたらし,児童生徒にずいぶん笑顔がみられるようになってきた。

5.教材名 コーヒー空瓶の針金通し
 1分野  手首,手指の機能訓練
 2ねらい
  波型,ら線状など種々の針金を使用することにより,つまむ,握る,手首をねじるなどの動作を通して手首・手指の機能の向上を図る。
  さらに,針金に色彩をはどこすことにより色の弁別に導くようにする。
 3設計の概要

コーヒー空瓶の針金通し

4指導方法・効果
  針金が波型やら線状のため瓶の穴に差し込むだけでは針金を通すことができず,針金をねじって入わたりするため手首の運動が誘発され手首や手指の訓練に役立った。空瓶などに執着をもっている対象児にとってはすぐに取りくみやすい教材であった。

6.まとめ
 創作教材のほんの一部の紹介であるがそのほかに私たちは子供たちの視覚,聴覚,触覚などの発達を促すために様々なものを創作し刺激を与えるようにしている。視覚を促すものとしては動物の大きな切絵の壁画や送迎用の箱車には楽しい白雪姫の絵を,又,人物大の猫とビニ−ルのザルをあわせて頭を作ってめだかの兄妹を踊り,などをとおしてたのしませている。触覚についてはヤクルトの空瓶を利用しガラガラを作りビニールホースにフィルトをまき鈴をつけにぎる,つかむ,ふるなど,手の感覚運動に利用している。そのほか,影絵,人形劇にアイディアを生かしている。ほんのちょっとしたアイデアが児童生徒の刺激を助長させ効果を上げている。このことは児童生徒の発達の実態を的確に把握した上で何を与えたらよいかと云うことから生れるものなのである。
 最後に教師はアイディアマンでなけわばならないということを提言しこの稿をまとめることにする。


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