福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -002/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

小学校教材

歌唱指導における教材研究の視点とその方法

−小学校の歌唱指導を例に−

教科教育部  安 部 哲 夫

1.はじめに

 明治15年,「音楽取調掛」の伊沢修二らによって「小学校唱歌集・初編」が刊行されて以来,「歌唱指導」は,我が国音楽教育の中核をなし,今日まで様々な音楽の表現を支える基盤として大切な役割を果たしてきた。
 さて,この歌唱指導において,より喜びと感動に満ちあふれた授業の実践を目指すためには,学習指導要領の目標及び内容を的確に受け止めるとともに児童の実態に応じた良質かつ最良の教材を見いだすことが大切であろう。
 そこで,児童一人一人の表現力の伸長を図り,ひいては,音楽性を高めて将来とも広く音楽を愛好する心情を育てることを目指しながら,歌唱指導における教材研究のあり方などについて述べてみたい。

2.学習指導要領における歌唱指導の位置づけ

表(I) 各学年の目標と歌唱表現の指導内容
(表 I ) 各学年の目標と歌唱表現の指導内容

 この系統表(表 I )は,音楽科各学年の目標及び歌唱表現の能力に関する主な指導事項である。教材研究を進めるに際しては,これら指導事項の見渡しを行い,各学年の目標達成にふさわしい教材を選択しながら,指導の究極的な目標ともいえる「音楽を愛好する心情の育成」へとせまることが大切である。

3.教材研究と教材開発

(1)教材研究の視点

 音楽科の教材研究は,その教材で身につけた学習内容が,その後のいろいろな学習の中で生きて働くことをねらって行われることが望まれる。つまり,歌唱指導を充実させるための教材研究は,「その歌によって(教材)何らかの学習内容を身につけさせることを目標にする」,言いかえれば,「その教材で児童に何を教えようとするか」を,的確に把握することが重要である。また,このような教材研究は,生涯教育の上からも大切になるものと思われる。そして,各学年の目標達成に有効と思われる教材を選択し,その学習の成果を確実に身につけさせることにより,音楽にふれる喜びを感じ取らせることが必要であろう。

(2)教材研究の方法
        1. 教材体験            ア、教師自らの音楽実践(教材の表現と鑑賞)            イ、教材のイメージ化                    昔のイメージを心に浮かべること            ウ、教材の価値についての基本的な推量        2. 教材分析            ア、教材の背景にあるもの                    作詞者・作曲者・出典・歴史的背景など            イ、音楽の分析                    音素材・音色・和声・調性・リズムなど        3. 教材評価・教材の価値についての検証            ア、教材の音楽的価値            イ、教材の教育的価値

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。