福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -005/042page
小・中・高校教材
植物教材の準備と利用
科学技術教育部 宮 内 三 良
1.はじめに
理科の学習のうち,生物領域でほ観察や実験・実習を行う場合に,対象がいきものであるので,その材料の準備が必要となる。戸棚の中から取り出した薬品ですぐ実験というわけにはいかない。特に植物教材では,季節による制約が多く,授業進度とあわせ,観察・実験適期の設定などに問題があり,学校現場では苦労するところである。
先に所報第57号で,あまり手数のかからない教材用生物として,学校園,理科室などで栽培しておきたい植物とその利用のしかたをあげておいた。学習指導要領の改訂で,高校の「理科I」などでは,生物専門以外の担当者が,生物領域を指導することにもなる。そうなると,教材用の植物を確保し,実験・実習時に必要なものを目的にかなった状態で,十分用意できるかが問題である。学校行事その他で,教材用植物での観察・実験の適期を逃してしまうこともある。仕方なく,教科書の図・写真,スライド・ビデオなどを利用しての説明だけで終ってしまったりする。児童生徒には無味乾燥な理科となり,テスト時だけの丸暗記で,あとはすっかり忘れてしまうパターンをくり返すことになるようである。
理科の学習では,やはり観察・実験・実習がポイントになる。理科教室の内外にいっも生物が飼育・栽培されていて,児童生徒たちが,興味をもって実験や実習ができる準備をしておきたいものである。
2.ムラサキツユクサ
所報第57号で,この植物が古くから教材用植物として栽培され,多目的に利用されている例をあげておいた。開花期が5〜6月なので,第二学期頃になると花が終わり,利用できないということであった。これは割とかんたんに解決できる。最初の開花株から,花のついた茎を,はさみで切っておくか,抜いておく。刈りこまなかった株では,開花後結実して花をつけない。刈りこんだ株では,その後約1ケ月ぐらいで再び花茎がのびはじめ,背丈はいくぶん低いが蕾をもち,9月には花を咲かせる。気温の状態でもいくぶん変化はあるが,福島市内でも10月頃まで開花株が得られるようである。つぼみの葯を利用しての減数分裂の観察などに使える。学校園には必ず植えておいて,このような処理をして利用してはしい植物である。
3.オリヅルラン
ランという名がついてはいるが,実はユリ科の植物である。アフリカ原産で,観賞用として栽培される常緑多年生植物で,最近ではそれはど珍しくもなく,高価でもないポピュラーな品種である。
葉の聞から長い茎を伸ばし,分岐した先端に葉をつけ,根を出し新株をふやしくいく。吊り鉢に植えこみ下げておくと.茎がたれ下った先に新株がたくさんできて,折鶴を糸で釣ったようである。葉には斑が入っているのが多く,また幅の広いいろいろな園芸種がでている。
鉢での栽培が一般的で.冬だけ室内にとりこんでおけば,一年中葉の美しさとたれ下った形の面白さが楽しめる。肥料は月に一度,市販の固形肥料を施すぐらいでよい。病虫害もはとんどなく,学校などでも,教室内で十分栽培できる。ふやすのもかんたんで,のびた茎の先の新株をとり,なるべく清潔な土にうえておくと,温度が高ければ2〜3日で発根