福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -006/042page
して,7〜10日ぐらいで根づくので鉢上げしておくといくらでもふやせる。
根 のびた茎先の新株をとって土にさしておく。2〜3日たって抜いてみる。新しくのび出した根は割と太くて白色,根毛をいっぱいつけてみずみずしい。水でよく洗って付着物を落とし,根端細胞を体細胞分裂の観察材料に用いる。木本性の根はかたくて,押しつぶしによる観察には向かない。この点,ユリ科の植物の根は一般にやわらかく,処理しやすい材料である。タマネギ,テンニク,ヒヤシンスなどが同じように用いられるのはこのためである。ほとんどの教科書に,材料としてタマネギが登場しているが,普通のタマネギは4〜7月中は休眠中で発根しないし,これ以外でも最近では発根阻害剤が塗布されている場合がある。オリヅルランは一度栽培しておくと,次々に新株を出し,水栽培ほどの面倒もなく,季節を問わず利用できるので大変便利な教材植物である。
体細胞分裂の観察法は,教科書などに出ている押しつぶし法でよい。押しつぶし法にもいろいろなやり方が紹介されている。一番やりやすい方法で試みて欲しい。これまでの実習では,材料を2〜3mmぐらいとり,45%プロピオン酸液に入れ加熱し,やわらかくなった材料をスライドガラス上にとり,もう1枚のスライドガラスを十字形に重ね,押しつぶす。はがしたスライドガラスの材料に染色液を滴下,カバーガラスをかけ検鏡する。この方法が,失敗も少なく,かんたんで確実に染色体の分裂像がとらえられるようである。酢酸カーミン液による染色よりは,プロビオン酸オルセインによる染色も,なかなかの好結果が得られるようである。
新株からは,空気中にややふとめの根がのびてくる。最初は白いが,次第に緑色に変り.古くなってくると非常にかたく灰白色から褐色になってくる。うす緑色ぐらいの根を1本とり,安全カミソリの刃で,横断切片を作ってみる。オリヅルランの根は,それほど固くもなく,またやわらかすぎることもなくて切りやすい材料である。そのまま水で装置して検鏡してもよいし,サフラニン,酢酸メチルグリーン,又はフロログルシンと塩酸などで染色して,内部組織の観察に用いる。
若い根では根毛細胞,内部の皮層(緑色のものでは細胞内に葉緑休をふくむ),肥厚した膜をもつ内皮・放射型の維管束などが,はっきりと観察できる。また皮層細胞には蓚酸カルシウムの針状結晶がふくまれているのもわかる。
植物組織の観察実習で,根は土の中から掘り出し用いるが,この材料ではその手聞がはぶける。鉢からたれ下る新株で,いつでも材料が得られるので便利である。