福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -007/042page
葉 肥料を十分に施し.水分を切らずに育てると葉は長くそして相当幅広くのびる。ヒロハオリズルランなどでは,1.5〜2cm幅ぐらいまでになる。裏面の表皮を剥ぎ,水で装置して検鏡する。ムラサキツユクサ,タマネギ,ユキノシタなどとは異なった表皮細胞の形,気孔の配置などが観察できる。
4. ミドリアマナ
あまり知られていない名であるが,オーニソガラムという園芸種に登場してくる植物である。地下部の鱗茎は秋に小さい鱗茎を作るので,鉢植えならそのまま休眠させ,または掘り上げ紙袋などに入れて保存する。翌春この鱗茎を土中に植えればたくさんふやせる。病虫害をうけることもなく,育てやすくかんたんに栽培できる植物である。生育もかなり早く,鱗茎は径約3〜4cmぐらい,花茎を長くのばし花穂も15〜20cmになる。種子は黒く,タマネギなどによく似ていて,多量にとれよく発芽するのでこの方法でもふやせる。
ミドリアマナの開花 ミドリアマナ 染色体の観察 ミドリアマナの体細胞染色体数は6本と少ない。タマネギの16,ムラサキツユクサ,テッポウユリの24,オリヅルランの28本にくらべて非常に少ない。
1. 根を用いて体細胞分裂を観察する。
体細胞分裂
ヒヤシンスなどの水栽培と同じ方法で,水を入れた容器に鱗茎をセットする。2〜3日で白い根がのびてくる。太さはタマネギ,オリヅルランよりは細い。また,種子をバーミキュライト,赤玉土などにまいてもよく発根する。
根端を用いての体細胞分裂の観察は,前にあげキタマネギ,オリズルランでの押しつぶし法によって行えばよい。
2. 減数分裂の観察
長くのびた花穂についたツポミの葯を用いる。鱗茎の植えこみ期をずらしたり,一度咲いた花茎を,切りとると,再び花茎がのびだし花穂を作るので長く利用できる。福島市でも10月中旬ごろまで材料が得られる。
花穂についたなるべく小さいツポミ(先端)をとる。1〜2mmぐらいのものがよく,これをこえるとほとんど花粉になっているものが多い。材料が小さいので双眼実体顧微鏡下で,ピンセット,柄付き針を用いて,ツポミを開く。葯をスライドガラス上にとり,酢酸カーミン,酢酸オルセイン,プロピオン酸オルセイン,ゲンチアナバイオレットなどの染色液を滴下し,カバーガラスをかける。濾紙ではさみ,押しつぶす。染色液を補い,アルコールランプなどであたため検鏡する。
または,葯をスライドガラス上にとったら,先の円い柄付き針か,ピンセットで押しつぶし,.内容物をひろげる。葯はとり除き,染色液を滴下し,カバーガラスをかけて検鏡する。
生殖細胞の花粉形成時の分裂であるから,体細胞の半数(n=3)の染色体が観察できる。
ムラサキツエクサにくらべて染色体数がかなり少ないという利点はあるが,長い花穂の中のどのツポミで減数分裂が行われているかを知るのはむずかしい。ツボミを机上にとり,大きい方から小さい方へとならべ,次々に葯をとり出し,プレパラートを作って検鏡していくとよい。
5.おわりに
教科書などでとりあげられている植物教材は.ひとつの例である。身近にある植物の中にも,扱い方によっては,うまく利用できるものがある。 県内各地の自然は,地域によりずいぶん異なっている。それぞれの地域の特徴をつかみ,活用して,生徒たちが日頃接している植物の中から実習用の教材をさがしてみたいものである。