福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -008/042page
教育工学
TP製作の基礎・基本
−TP作成機の活用について−経営研究部 宮 内 三 良1.はじめに
学習指導の質的改善・充実をめざして,各学校においては多くの教育機器が導入され「わかる授業」の創造に取り組んでいる。その中で,OHPの普及率が高まり,授業の実際に幅広く活用され,効果をあげつつある。そのことは,TP教材と授業の効率性とが深いかかわりをもっていることを裏づけている。
「よいTP教材」は,指導のねらいや内容に即しているとともに,学習者の学習意欲を喚起するものでなければならない。したがって,TP教材の自作を行う場合,多くの視点から吟味を行い,作成しなければならない。
しかしながら,OHP使用上の問題点として,「TP製作の時間が少ない」「TP製作の道具・材料が少ない」ことなどがあげられている。
上記の問題点を解決する一つの方法として,TP作成機の活用が考えられる。 TP作成機は,簡単な操作で短時間に,身近な材料で指導の実際に役立つ有効なTPを作成することができる。
今回は,TP作成機の活用にあたって,基本的におさえておかなければならないことを中心に述べてみたい。2.TP作成機の設置状況と使用の実際
次の<表1><表2><表3>は,当教育センターが本年度(昭和58年9月)実施した「OHPの利用に関するアンケート」の結果の一部である。(以下文中の表は,小学校162名・中学校208名を対象とした調査結果である。)
<表1>TP作成機の設置状況 (単位 %) TP作成機
ありTP作成機
なし平均台数 小学校 80.0 20.0 1.5 中学校 70.0 30.0 1.0
<表2>TP作成機使用度 (単位 %) よく使う 時々使う あまり
使わない使わない 小学校 8.1 42.5 31.9 17.5 中学校 1.5 24.6 35.4 38.5
<表3>TP作成機を使わない理由 (単位% 上位4つ) 1 位 2 位 3 位 4 位 小学校 台数不足 資料(原稿)の
検索・作成困難使用法を
知らない旧式で便
いにくい45.3 25.6 18.6 2.3 中学校 資料(原稿)の
検索・作成困難使用法を
知らない台数不足 旧式で便
いにくい43.6 23.4 18.0 5.3 <表1>を見るとほぼ80%の学校にTP作成機が設置されている。しかし,<表2>を見ると,50%以上の先生方が「あまり使わない」「使わない」と答えている。
TP作成機を使わない理由として,「資料(原稿)の検索・作成が困難」「使用法を知らない」などと答えている。
このことから言えることは,他の教育機器の使用にもみられるように,TP作成機の設備の促進よりは,機器のもつ機能や特性の理解と,積極的なソフトウェアの開発が問題点であると思われる。3.TP作成機の種類及び特徴
複写の原理の違いによって,原稿(資料)の種頬・材料・操作の方法・解像力などが違うので,それぞれの自校TP作成機の性能に熟知することが必要である。
分けかたにはいろいろあるが,ここではTP作成の過程で現像液を使う湿式と使わない乾式に分類して説明してみたい。
湿式というのは,複写する過程で現像液などの薬液を使ったり,水洗いをするなど液剤を媒体としてTPを作る方法である。写真法もこの方式に分類することができる。
乾式というのは,複写する過程で現像液などを使わずにTPを作る方法である。 <表4>に乾式と湿式の特徴をまとめてみた。
<表4>乾式と湿式の特徴の比較 乾 式 湿 式 複写機の操作 簡単、子どもにもできる 複雑、かなりの熟練を要するものもある 原 稿 一枚がよい ノート・週刊誌の厚さぐらいまではよい カーボンを含んでいる必要がある 厚手の本からも複写できる機種が多い 色印刷の原稿からも複写できる 現像処理 薬品による処理不要 薬品による現像処理と乾燥が必要