福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -011/042page

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教育相談

学習指導における相談的かかわり

教育相談部  坂 本 善 一

はじめに

 教育相談は,狭義には,「教育上の諸問題に関して,問題の解決と人格の健全な発達のために,個人的または集団的な接触を通して,助力を与えようとするだけにとどまらず,子どもが可能性を自ら啓発し,自ら問題を解決し,その子なりの調和のとれた人間形成ができるよう助力することである」ということができる。
 ここでは,教育上の諸問題の中の学習指導に焦点を当て,教育相談の機能を日々の学習指導にどのように生かしたらよいか,すなわち「学習指導における相談的かかわり」についてその考え方を述べ,事例をあげる。

1.学習指導における相談的かかわりについて

(1)学習指導における相談的かかわりについての考え
 学習指導は,「教師が児童生徒の学習に協力し,これを援助して,能率的効果的に学習が行われるようにすること」(学習指導要領一般編昭和26年版)とおさえられている。この児童生徒の学習が,能率的効果的に行われるよう援助する手だての一つとして,学習指導における相談的なかかわりが重要であると考える。
 学習指導における相談的かかわりは,学習過程における児童生徒の感情面を大切にし,教師がこれを的確に感受し,その感情を学習目標の達成に向けてさらに高めるよう援助することである」と考える。

(2)学習指導における相談的かかわりを生かす場面
 学習指導には次の3つの側面があると考えられる。

  1. 内容を理解する。  →「認識的側面」
  2. やり方を身につける →「技術的側面」
  3. 意欲を高める    →「感情的側面」
 学習指導における相談的かかわりは,この3つの側面のそれぞれに生かされなければならない。特に,意欲にかかわる感情的側面が,相談的かかわりを必要とする側面である。すなわち感情的側面の中の
  1. 児童生徒が学習意欲を失っている場面
  2. 学習過程でつまずき,挫折を覚えている場面
  3. 学習活動に自信がもてないでいる場面
  4. 問題になる反応(誤反応など)を示している場面
 など,これらの場面こそが,相談的に強くかかわるべき場面であると考える。

(3)学習活動への相談的かかわり
 児童生徒の学習活動に相談的にかかわるということを,具体的には次のようにとらえる。

  1.  児童生徒の学習態度や表情から,学習に対する児童生徒一人一人の感情を的確にとらえ子供の個性や能力に応じて適切に援助指導を行うこと ― 興味・関心を示しているか,意欲はどうか,つまずいてはいないか,あきらめかけてはいないか,自信を失ってはいないか,などの感情をとらえ,適切な援助指導を行うこと。
  2.  児童生徒のいかなる学習反応をも,身を乗り出して視(み),聴きし,これを受容し,活用するよう努めること ― 児童生徒の学習反応がたとえ誤反応であったとしても,それはその子の精一杯の反応として尊重し,受け入れ,学習指導に活用するよう努めること。
  3.  児童生徒の反応と,反応の根拠を把握し,理解すること ― 児童生徒の反応の根拠を聴き出し,なぜその反応が導き出されたのかを理解すること。
  4.  児童生徒の知的好奇心を引き出す工夫をすること ― 「なぜだろう」「どうなっているのだろう」「へんだなあ」…など,児童生徒の知的好奇心を引き出すようなはたらきかけを工夫すること。
  5.  児童生徒と共に知的興奮を味わう場面を設定すること ― 「ああそうか」「なるはど」「わかる…」「できそうだ」「できた,できた」…などという,学習の喜びを味わう場面


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