福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -012/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 を設定するよう工夫すること。
 つまり,「学習指導の過程で,児童生徒と共感的に同行すること」− これが,児童生徒の 学習活動への相談的かかわりの一方法であると考える。

2.学習指導における相談的かかわりの例

国語(毛筆書写)小学5年生 題材 親
・「親」を「 間違った漢字 」と書いた作品により相談的に学習指導を進めた例

T 「親」・おや−って,どんな意味?
P 1 お父さんやお母さんのことです。
P 2 辞書にもそう書いてあります。
T 親−お父さん,お母さんって,みんなにとっては,どんな人?
P 3 子供の世話をしてくれる…。
P 4 子供や家族のために,いっしょうけんめい働いている…。
P 5 私が病気のとき,お医者さんへ連れていってくれたり,夜も寝ないで看病してくれたりしました。
P 6 子供がすくすく育つように,けがなどしないように,いつも面倒を見てくれている。
T なるほど,みんなのことを見守ってくれているのが親−父,母なんだね。<反応の受容>
それでは「親」という漢字の組み立てをよく見つめてみよう。<児童の知的好奇心を引き出す工夫>
P 4 立と木と見でできている。
P,T ホントだ…。<身を乗り出して視(み),聴く>
T 1 立と木と見が組み合わさって,なぜ「おや−父,母」という意味を表すのでしょうね…。<児童の知的好奇心を引き出す工夫>
A なにかで読んだことがある…さるの子どもたちが山で木の実を食べたり,遊んだりしているとき親ざるは木の上に立って,子ざるが何かに襲われないように見はりをしていた…って。そういうのが「親−父,母」だ…って。
P T なるほど…面白い話だね…。<反応を受容し,児童と共に知的興奮を味わう>
T それでは,いつものように先生が辞書(字源)で調べてみようか…「 漢字「親」の偏 」は, ひっつく ,「親」は, ひっついて見る ということから おや のこと…だって。Aさんのお話によくにているね。…。<誤反応の修正と,反応の受容>
 
(この話し合いを通し,「親」の意味と文字の構成を理解した上で,毛筆で書き始める)
 
K (「 間違った漢字 」と大書する)
P 3 K君の字,おかしいよ…(みんながゲラゲラ笑う)
K (恥ずかしそうに,教科書に書かれている親と自分が書いた 間違った漢字 とを見比べている。)
T <自信を失いかけているKの感情をくみとり>どれどれ,見せてどらん。<身を乗り出して視(み)る>待てよ,「 間違った漢字 」というこの字にも, 目をひっつけて見る −おや−という意味はないものかな?<誤反応を大切にとり上げる>
P 6 うーん。 目をひっつける という意味があるみたい。 間違った漢字 でもまるっきりまちがいではないみたい…。
T そうね。。辞書には 間違った漢字 という漢字は無いものかな…。(児童,教師共に辞書をひく)<共感的に同行する>
P,T どうしても無いね…。
T でもK君は, 見ている ことを で表したんだね?<誤反応のわけを理解する>辞書(字源)では目と,人を表すルで となり,人が目をあけてみるという意味になるんだって…。<援助・指導>
K やっぱり, おや は, 漢字「親」の偏 でなけりゃ…。(自己修正をし,「親」と大書する。)

−誤反応に相談的にかかわることにより,児童たちは についてより深く理解することができた−

おわりに

 「学習指導における相談的かかわり」についての実践はまだ十分でない。今後は,ここに述べた相談的かかわりの考えを基に,実践を積み重ね,より充実した「学習指導における相談的かかわり」を具現したいものと念じている。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。