福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -014/042page

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 A男は,両親が共働きのため,主に祖母が育てた。祖母が亡くなった小学校四年生から成績が下がり,父の監視下でいやおうなく問題集などをやらされたりした。
 A男は両親を嫌い,中学校に入学したころより両親との会話が減り,やがてほとんど口をきかなくなった。

※親子関係診断検査(図2)による養育態度
 父 拒否・期待・矛盾・不一致型
 母 拒否・溺愛・矛盾型

図3 エゴグラム (―父.…母)
図3 エゴグラム ※エゴグラム(図3)にみられる両親の自我状態

 父(理性的だが,優しさも厳しさもなく自己表現も苦手で,他人のことはあまり考えないタイプ)

 母(理性的で,他人に対しては優しいが,厳しさに欠ける面がある)
2 友人関係
 友人は少ない。中学校3年ころより特定の友人と喫煙したり,外泊したりしており,警察の補導もー緒に受けた。女友だちは特にいない。
3 生育歴
  イ 身体・生理面
 幼児期は指しゃぶりし,ぜん息気味で登園をぐずった。小学校時はつめかみやチック症が出て,現在まで続いている。
  ロ 知能・学業成績
 知能検査IQ=105,成績は小学校4年より次第に下がり,現在45人中44位,成績不良3科目がある。
  ハ 性格
 小学校時はおとなしく,素直であったが,テスト結果をかくすことが時々あった。中学校に入ると落ち着きを失い,反抗的になった。
※YG性格検査プロフィール(図4)
   B型,抑うつ性大,気分の変化大,社会的外向,非活動性
図4 YG性格検査プロフィール
a

(2)問題行動の背景・原因
 幼児期からの愛情飢餓,矛盾した養育態度による混乱などから不眠におちいり身体的・精神的不調,更に両親や教師に対する反抗,望ましくない友人関係,学習意欲の欠如と学業不振など登校拒否へと発展してしまったと考えられる。

(3)指導方針(仮説)
 親子関係のゆがみは,交流分析などを利用して改善を試みる。睡眠障害やチック症の改善には自律訓練法を実施し,過1回程度のカウンセリングを通して自律性を高めていく。学校での不安解消には,担任と連携して,相談的対応を進めていく。

(4)指導経過と結果
 毎過1回程度の面接を重ねるうち,母親と少し話をするようになってきた。父親には,まだ口をきかない。今まで将来に対する希望がはっきりしなかったが,最近になって,将来ホテルマンになりたいので各種学校に入りたいという希望がでてきた。そうして,本当は勉強もよくできるようになりたいのだと言うまでになった。登校刺激は担任にも依頼して控えてきた。睡眠障害やチック症は自律訓練の実施で次第に治りつつある。

(5)考察
 登校拒否の状態像は実に多様で,背景,原因なども複雑で多様化している。従って,その指導の仕方もまた多種多様であるから,学校においては全教師の協力と組織的な取り組みが必要であろう。


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