福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -027/042page
3.研究の計画と方法
本研究は,当教育センター「学習指導と評価に関する研究」プロジェクトチームによる3か年の継続研究であり,その研究組織並びに研究計画と方法は次のとおりである。
(1)研究の組織
プロジェクト委員会 ・所内委員 23名 ・所外研究協力委員 6名 企画推進委員会 アンケート作成委員会 ・第1年次研究推進のための委員会 (2)研究の計画と方法
- 第1年次(昭和58年度)
- 実態調査,理論研究 − 研究紀要刊行
- 第2年次(昭和59年度)
- 実証研究(授業研究)− 研究紀要刊行
- 第3年次(昭和60年度)
- 実証研究(授業研究)− 研究紀要刊行
4.本年度(第1年次)の研究
(1)研究の概要
初年度となる本年度は,教育評価に関する資料収集や文献による理論研究などを主とした基礎的研究を行い,併せて,今後の研究の方向づけのため,県下の小・中・高等学校における「指導と評価」についての実態調査を実施する。
実態調査については,アンケート方式を採用する。 従って,本年度は,アンケートの調査項目の作成とその集計処理並びに分析と考察が,研究の主たる内容となる。(2)調査項目作成の手順
まず,当教育センター所員に予備調査を実施して「指導と評価」に関する今日的課題を問い,その調査結果を集約し,更に,企画推進委員会で,調査項目設定のための理論を構築して,調査項目の素案作りに着手した。
素案は,「学習指導における評価」を領域とし,更に,授業前の評価,授業中の評価,授業後の評価,学期・学年の評価と評定を内容とした。
その後,素案は,再三にわたり,アンケート作成委員会,プロジェクト委員会で論議され 後述のような内容が決定された。(3)調査項目設定のための理論
調査項目の主たる内容が「指導と評価」に関するものであり,項目設定に当たっては,橋本重治,辰見敏夫,梶田叡一氏などの学習評価の基礎理論を参考にし,下記のような理論づけをした。1.評価の意義
教育における何らかの選択・決定を下すために有用な情報を作成し,収集し,準備する手続きである。しかもその情報は,教育計画を実施した成果すなわち出力に関する情報のみでなく,知能・適性・既有の学力・性格・学習興味習慣・適応性・環境などの入力に関する情報を含むものである(教育評価要説:P9)。2.評価の目的
評価の教育的目的は,評価が主としてどんな教育決定のために利用されるかという視点から,指導目的,学習目的,管理目的,研究目的にまとめられる。本調査においては,特に,指導目的,学習目的からの評価について取り上げる。(1)指導目的
教育の立案・指導にあたる人,すなわち,教師の立場から評価のフイードバック機能を利用するという目的である。
具体的に言えば.このような目的からの評価には次のような測定・評価が含まれる。
- ア、
- 学年始めや学期始めなどにおいて,行われる知能・学力・学習興味や習慣・性格などについての主として標準化検査 …… 診断的評価
- イ、
- 個々の教材や単元の指導計画を選択・決定する際に,その教材の学習に成功するための必須の前提条件やレディネスとなるような既習の知識・技能・理解などを生徒が所有しているかどうかをチェックする …… 診断的評価
- ウ、
- 授業の進行中において,教師が指導した目標や内容について,児童生徒がマスターしたかどうかをチェックし,その結果により再指導することを目的とした評価 …… 形成的評価
- エ、
- 単元の終了時,学期の中間,学期未および学年末において,それぞれの期間における計画と指導の効果をチェックし,結果により補足したり,改善する目的のために利用されるような評価 …… 総括的評価
(2)学習目的
学習者である児童生徒の立場から,児童生徒を評価の主体者としての評価目的。具体的には,自己評価や相互評価の形で行わせ,その学習の成功・失敗を直接児童生徒本人にフイードバックし,自己改善を行わせる。
3.評価の領域
学力の評価又は教料の評価を中心に,更に学力を左右する入力条件としての児童生徒の適性・意欲・興味・態度などを含む領域とする。