福島県教育センター所報ふくしま No.64(S58/1983.12) -035/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

6mm,長さ1.5mの塩ビパイプを用い,先端をラッパ状に広げて後玉を押しやすいよう工夫した。筒には,前方端より50mmの位置に径16mmの小穴を2か所あけ,空気抜きとした。

演示用空気でっぽう

(1)活用の利点

  1. 大型の空気でっぼうであることから,児童に提示したとき「どこまでとぶか」とか「どんな音がするのだろう」とか興味関心をひきつけること。(写真1)
  2. 後玉に押された前玉が,小穴を通りすぎると小穴から空気が逃げ出して前玉は進まなくなる。
     このことから,筒の中の空気の存在に気づかせることができること。
  3. 前玉を固定して,小穴の口にゴム風船を取りつけて,後玉をすすめると,風船がふくらむことから,筒の中の空気がおされてもれ出てくることを視覚としてとらえることができること。(写真2)

    写真1 写真2
    写真1 写真2

  4. 筒の中の空気の存在を,大きな変化で視覚を通してとらえることができること。

    例1
     前玉を固定して,筒先を水中に入れて後玉を移動する。
    例2
     筒先をビニール袋で覆って簡の中の空気を入れる。筒の容量が約5lあるので,かなりふくらみ,目でとらえることができる。
    例1

  5. 透明であるため,前玉後玉のようすが。よくわかること。

(2)実験のコツ

  1. 玉には,木綿布を重ねて巻きつけ弾力をもたせる。
  2. 玉は,水でしめらせてすべりやすくするとともに,筒の内壁に密着させて,空気がもれるのを防ぐ。
  3. 筒をやや上向きに固定して押すと,前玉の飛距離が得られる。この装置で約10m。
  4. 筒の小穴の位置は,前玉の長さ(約8cm)の中央部位とし,玉が半分押し出された所で,小穴から空気がもれて動かなくなるようにすると効果的である。
  5. 小穴の口径を,ゴム栓の下径と同じにしておくと,応用範囲が広い。

(3)改善を要する点

  1. 筒は,厚手の塩ビ管を使用しているが,衝撃に弱いこと。
  2. 押し棒にストッパーがないため,時により後玉をも筒から押し出してしまうこと。
  3. 使用回数が多くなればなるはど,筒の内壁に玉の移動による微細な傷がつき,透明度が落ちることが予想されること。

4.おわりに

 私たちが,素材の教材化をはかるとき大切なことは,ただ単なる思いつきで素材や教材をおきかえるのではなく,教材としての条件にてらして適否を判断することであろう。素材は,あくまで素材にしかすぎないが,教材として耐えうるものになれるかどうかは,見つめなおす私たちの目次第ではないだろうか。教科書に扱われている内容は,一つの方法にしかすぎないことを確認し,指導要領で特に素材をとり上げていない趣旨を生かして,子ども・学校・地域の実情に合致した教材の発見・掘り起こしに努めたいものと思う。

 また,私たちは,教材研究をすすめる中で疑問に感じたことがらをつきとめたり,課題を解決するために工夫する心構えをいつも持ちつづける教師でありたい。固定観念にとらわれない自由な発想を生かすことにより,教師自身にも柔軟な心が培われ 無言のうちにも子どもたちに変容をもたらす力になるものと信ずる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。