福島県教育センター所報ふくしま No.65(S59/1984.2) -002/042page

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中学校教材

「観点別学習状況」の評価の手順

−中学校外国語科(英語)の場合−

教科教育部  江 尻 茂 男

1.はじめに

 指導要録の「観点別学習状況」の欄の趣旨については,次のように要約されると思われる。

(1)学習指導要領に示されている教科の目標に生徒がどの程度達成しているかを,一人一人について明らかにして実際の指導に役立てる。
(2)教科どとの数個の観点から,その教科の各学年の目標の達成状況を評価し,指導の改善に役立てる。

 この欄の設けられた意味は,各教科の基礎的・基本的事項を確実に生徒の身につけさせるという新しい学習指導要領の基本的なねらいにそったものである。
 また,生徒の学習目標の達成状況を直接的に評価する方法である絶対評価を採用し,その記録を手がかりに指導の改善をしていくという意図も含まれているのである。

 しかし,現状では,この欄の評価上の問題として「達成目標が抽象的」「達成基準があいまい」「適切なテスト問題の作成が困難」「直観的,主観的な評価になりやすい」などがあげられるようである。

 上記の問題を解決するため,観点別学習状況の評価の手順を確認し,その中の「達成目標及び達成基準の設定」を中心に,英語科の例を通して考察したい。なお,英語科の観点及び趣旨は,指導要録の付属資料によれば,次のとおりである。

観点 第 1 学 年 第 2 ・ 3 学 年
聞くこと 初歩的な英語の話を聞いて. 簡単な事柄の 意味を理解することができる。 …事柄の概要(要点)をとらえながら,その…
話すこと 初歩的な英語を用いて, 簡単な事柄を 話すことができる。 …事柄の概要(要点)が伝わるように…
読むこと 初歩的な英語の文を読んで, 簡単な事柄の 意味を理解することができる。 …事柄の概要(要点)をとらえながら.その…
書くこと 初歩的な英語を用いて, 簡単な事柄について 文を書くことができる。 …事柄の概要(要点)が伝わるように…
関心・態度 英語に対して関心をもち,いろいろの機会をとらえて英語を聞いたり,読んだり,書いたりしようとする態度を身につけている。 第1学年に同じ

 一般に,観点別学習状況の評価は,次の手順をとるといわれている。すなわち,目標分析とその具体化→測定する代表的な目標の抽出→測定問題の作成→達成基準の設定→達成度の判定となるであろう。

2.目標分析と達成目標の設定

 まず,はじめに具体的な達成目標の設定から始まることになる。そのためには,学習指導要領に示されている目標を分析し生徒にどのような言語活動を行わせ,どんな英語の力をつけさせるのかを明確にする必要がある。なお達成目標の手順の例を示してみたい。

・外国語科(英語)の目標分析
 ↓
 教科の全体構造をおさえる。特に目標を構成する三つのねらい(1 三領域の基礎的な能力 2 日本語と英語の相違 3 外国の文化の民族性,地域性)を浮き彫りにする。
・各学年の目標分析
 ↓
 「簡単な事柄」「事柄の概要」「事柄の要点」について,初歩的な英語を用いて行う言語活動のあるべき姿をおさえる。
・言語活動の指導事項の分析と達成目標の設定
 ↓
 指導事項それぞれの内容を分析し,学年間の関連を図りながら,各指導事項に応じた言語活動を具体的に達成目標として設定する。
・課,1単位時間の達成目標の設定
 題材,言語材料との関連から,一層具体的な達成目標を設定する。

 このことについて,次に第1学年「読むこと」を例にとりく表1>に示すことにする。

3.観点別学習状況の評価の時期と方法

 目標分析により達成目標が設定され,それに基づいて,題材内容,言語材料との関連を考慮して評価のための問題などが作成される。ここで各観点を,いつ,どのようにして評価するのかを検討する必要もあろう。3領域の場合を考えてみたい。

(1)評価の時期
 毎時間の達成目標は,主にその時間の学習内容の基礎的・基本的事項について設定されるものである。


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