福島県教育センター所報ふくしま No.65(S59/1984.2) -013/042page

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生徒指導

発達課題に即した生徒指導の一貫性

−中・高校における「自発性」の育成−

経営研究部  松 本 喜 男

はじめに

 先に,所報61および63号で人格形成上の発達課題として,小学校における「自立感」の育成と「活動性」の育成について論述したが,本号では中学校と高等学校における「自発性」の育成について述べることとする。

1.発達課題としての「自発性」とは

 人格形成上の発達課題として,「信頼感」→「自立感」→「活動性」→「自発性」→「自己同一性」へとそのながれが考えられる。これらが統合的な側面から,人間性豊かな児童生徒を育成する内容であり,ながれである。このような発達課題としての「自発性」を,坂本昇一氏は,「自ら目標を定め,それに迫る方法を自ら考えて行動すること」と述べており,ここでは,「自らの意志で進んでする働き」ととらえてみたい。

2.「自発性」の育成のために

 中学校における特別活動の一つの内容であるところの生徒活動を例にして「自発性」の育成について述べると,学級活動,生徒会活動,あるいはクラブ活動にしても,それは生徒の自主性を尊重し,教師の適切な指導の下に実践を展開していくものである。
 その特質の一つとして,「生徒の自発的,自治的な活動を尊重する教育活動」ということが強調されている。これは,生徒が自発的,自治的に集団活動を進めていくという性質のものであり,これらの教育的な効果を高めるためには,生徒がそれぞれの集団に即した組織を設け,役割を分担し,活動の計画を立て,生徒自ら実践するという経験をふむことが大切である。このような経験を通して「自発性」が育つものといえる。このことは,高等学校における生徒会活動や学校行事などの実践についても共通するものである。したがって,学校生括の中にこのような経験を数多く生徒に与えるようにすることによって「自発性」が育つものといえる。

3.「自発性」を育てる基本的な考え方

 「自発性」を育てるにはいろいろあると考えられるが,ここでは,基本的なことと思われる次の二点について述べることにする。

(1)生徒が自己の行動に責任をもつよう援助する
 学校における諸活動において,生徒が自分や自分たちの行動などを自ら考え,自ら決めて,それを実行するという経験を広く得させるようにすることを通して「自発性」は育つものといえる。このためには,生徒に自らの行動を自らの力で選択する自由とそれを実行する機会を与えることである。しかしそれは,自分勝手なことを好きなようにやるという意味ではなく,自己の行為が周囲の人々の自己実現に役立つと同時に自己の伸長につながるものでなければならない。しかも,ここで大切なことは,自らの決断に対して,自ら責任のとれる範囲であることを指導しながら実践させることである。具体的な実践として,例えば,体育祭や文化祭,あるいは修学旅行などの計画も,教師の適切な指導の下に,できるだけ生徒自身の手によって立て,生徒たちの責任において自主的に運営するように指導することが望まれる。しかし,これらの指導において大切なことは是は是,非は非とする教師のき然とした指導である。

(2)生徒一人一人のもつ発達の可能性を援助する
 生徒一人一人のもつ発達の可能性は,原則的には生徒自身が発見し,その努力によって達成するものであるが,教師としてこの可能性の発見と援助に努めることが「自発性」を育てる上から大切である。
 したがって,教育課程の編成・実施や日常生活の指導に当っても,生徒の発達の可能性を助長する経験の場や機会を多く設けることが大切となる。例えば,学校行事,クラブ活動あるいは社会参加活動などの場面が考えられるが,ここでの行為などに対する賞賛や励ましが生徒の存在感を高め,ひいては「自発性」の育成につながるものといえよう。

おわりに

 「自発性」などと言うことは,ある日突然身につくものではなく,毎日の積み重ねによって身につくものである。したがって,教育活動のあらゆる場に「自発性」を育てる機会を数多く用意することが必要といえる。


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