福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -004/038page

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と指摘していることを深くわきまえなければならないであろう。

(3)個性と創造性の伸長にかかわる学習指導のあり方
 報告では,個性と創造性の伸長のねらい,その必要性ならびに重要な着眼点をあげているので,この提示に沿う学習指導を実践しなければならないが,児童生徒の能力・適性等それ自体についての理解に誤りがないようにすることが必要であるとしている指摘は,特に重要である。われわれは,このような構えにおいて,

  1. ひとりひとりの学習傾性,学力状態を熟知することに努め,それぞれに即して,それぞれの学習の成立を支えること。
  2. のびのびと自己の考えや意見を述べ合う学習状況を醸成し,そのなかで,自己をたしかめながら自己を向上させようとするあり方を励ますこと。
  3. 誤答を大事にし,そこからその子の個性的なものを見出し,正しく伸ばすこと。
  4. ひとりひとりに十分指導の手をのばしうるように授業形態を工夫すること。(座席の配置の工夫などをふくめて)。
  5. 個別指導を主軸にすえながら,グループ指導,一斉指導をよく活用すること。
等,具体的手だての工夫に努めなければならない。
 総じて,日常の生活指導が下敷きになるのであって,単に授業内の指導にとどまることはできない。
 なお,中等教育資料No.471,座談会−個性を伸ばす教育−をよく参照されるよう望むものである。

(4)文化と伝統の尊重にかかわる学習指導のあり方
 報告は,文化と伝統の尊重が,重要である理由を述べ,真に自国の発展のため,新たな文化を創造し,国際社会において他国と協力協調し,しかも主体的に行動できる日本人の育成を学校教育に期待している。われわれは,この提示の精神にのっとる日常の教育実践を展開しなければならないが,学習指導にあたって,1.教材の選択において,この精神にふさわしい内容のものをととのえること。2.地域の自然と伝承文化の教材化をはかること。(すでにこのことについて一応の成果をあげている学校がある。)ならびに,体験学習等によって各自に深めさせること。3.文化や伝統にかかわる地域の人材の活用をはかること。4.国際理解の指導に気くぼりし,社会的文化的差異を知ることを通して,それをふまえて,より高い次元で結び合う心情と,手だての基盤を養うこと。等に,特に工夫努力すべきである。

 

4.現場における学習指導改善にかかわる問題点

 学習指導の改善については,審議会の報告を先取りするようなかたちで,改善研究をすすめている現場の諸事例を承知しているので,頼もしく思っているが,つぎのような事柄について考えさせられている。

(1)自ら学びとる力を養うとか,自ら考える力を育てるとか,自ら追究する力を育てる授業の創造とか,すべて自己教育力の育成の内容をなすと考えられるが,そうした学習指導は,日常生活それ自体が基底となるので,学校生活のみならず,家庭生活社会生活のなかで,子どもがそうした生活をするよう生活指導が行われるべきで,学校は家庭と社会に協力を働きかけなくてならない。それがどう意識されているか。(理論的には1の項参照のこと。)

(2)子どもの現有の力量に見合った学習をさせれば,生き生きと取り組んでいるが,質的に高まらないおそれがあると訴える向きがある。その子に即して質を高める手だてのポイントを示唆する,必要によっては指示する,直接教えることである。教師は教えることをはばかってはならない。如何に自ら学ぶかについて教えるのであって,一方的に教えこむのではない。子どもが主動的である授業は,これからの方向であるが,上述を深く配慮する必要がある。

(3)個別指導,習熟度別の指導でなければならないという。もっともなことである。元来その子の習熟度によって指導するのが学習指導の本来的なあり方であるが,習熟度は各個によって異なるはず。個が真に個たりうるのは他を媒介することによる。これらを忘れて,そのひとりを伸長させる学習指導になるであろうか。

(4)合科的指導は,個性と創造性の伸長の基盤を培う意味において,今後その比重は大になる。それは,幼稚園の総合指導の発展上にあるのであって,一二の教科指導のミックスではあるまい。(すぐれた実践をしている学校もある。)

(5)教育評価が,学習指導の改善にかかわって見直されなければならないことは当然であるが,それは教育評価の本来性に帰還することである。なお今後自己評価能力を正しく養う研究が強く望まれている。

 

おわりに

 以上はまことに粗述にすぎない。ことに各項内容の表現にバランスを欠き,述べるべきことを述べえなかったような気がかりを残し,甚だ意に満たないが,互に考究するよすがともなればと思う。(59.5.5)


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