福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -005/038page

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小・中・高校教材

社会科における地域素材の教材化

−小・中・高等学校に共通する地域教材の開発とその活用−

教科教育部  杉 原 陸 夫

1. はじめに

 社会科指導に望まれる課題は数多く存在するが,その中でも,学習指導の改善は重要な課題の一つである。そのためには,学習指導の在り方を学習指導要領に掲げられている目標の達成という観点から工夫・改善し,よりよい授業の展開をしなければならない。

 社会科の場合,学習指導を改善する有効な手だての一つは,社会科に対する児童生徒の興味と関心を高め,学習意欲を喚起することである。そのために,一人一人の児童生徒が学習事項に興味と関心をもち,意欲的に学習に取り組むことのできる教材を用意することが大切になる。この意欲的な学習を可能にする教材の中でも,特に身近な地域教材が有効であることは,各種の研究会活動や学校の実践研究において数多く報告されている。

 身近な地域教材を活用した学習は,認識対象である地域の具体的な社会的事象や事実を,教科書などに抽象的・観念的に記載されている社会的事象や事実と結びつけて考え合わせることによって,これまで気づかなかった社会的事象のもつ意味やみえなかった関係・構造・機能などの具体的な理解を可能にする。また,学習によって身につけた手法を使って,児童生徒自らが,身近な地域事象の中から新しい課題を発見し,自らの力で追求することも可能にするからである。

2.地域教材の開発と活用

 児童生徒が社会的事象に興味と関心をもち,自らの手で調べ,考え,その意味を理解することができるような社会科学習を可能にするために,身近な地域事象=地域素材を取り上げて教材化することが有効であるといっても,すぐにでも教材化でき,活用できそうな地域素材がみつからないという場合も多い。更に,地域素材がみつかったとしても,教材化するには一定の手続きを経る必要もある。

 それでは,身近な地域素材をどのように教材化したらよいのであろうか,また,教材化した身近な地域素材を指導計画に位置づけて活用する場合,どのような点に留意すればよいのであろうか。このことについて,以下,小学校第5学年「社会」,中学校「地理的分野」,「公民的分野」,高等学校「現代社会」を通して共通して学習する「都市化・都市問題」に関する単元(表1)を例に,地域教材の開発とその活用の在り方について述べてみたい。

表1「都市化・都市間題」に関する単元と内容   (県内で採択されている教科書による)
単   元 内    容
小学校第5学年「社会」
 五、日本の国土
 (四)国土とわたしたちの生活
 ↓
中学校「地理的分野」
 第2編 日本とその諸地域
  第7章 関東地方
  −−−−−−−−
 第3編 世界の中の日本
  第2章 国土の利用
 ↓
中学校「公民的分野」
 第4章 今日の経済と社会
 ↓
高等学校「現代社会」
 第1部 現代社会の基本的問題
  第1章 現代と人間
  −−−−−−−−−
  第2章 現代の経済社会と国民福祉
   3 日本経済の特質と国際化
・人口の多い大都市とその周辺での交通問
 題,住宅難,緑地の減少
 

・東京の都市問題(住宅・公共施設の不
 足,高い地価,生活環境の悪化など)
・人口の都市集中と過密による問題
 



・環境問題,大都市・地方都市周辺の都市
 化,都市問題
 

・豊かな国の人口問題人口の都市集中によ
 る過密,環境の悪化
.日本経済の特質と課題の中で「都市化を
 めぐる問題」(大都市への過度の人口集中,
 住宅・交通問題など)
(教科書は小・中・高校とも東京書籍による)

(1)地域教材の作成例 −その1−

・対象地域
福島市
・作成目的
市立小学校の児童数の5年ごとの変化を統計表(略)で表し,それを図化し(図1),都市化に伴う地域の変容をとらえる資料とする。


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