福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -007/038page

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イ 図1−1の○印,◎印の学校付近の地価。
ウ 図1−2の●印の学校のうち,市の中心都の学校(番号1や5)付近の地価。
エ 児童数の増加の割合が大きい◎印の学校付近の土地の様子,減少の著しい,市の中心部の●印の学校付近の土地の様子。(野外観察や航空写真などによる地域観察と合わせての読み)

(3)地域教材を活用した授業の工夫
 ・県内の小学5年生は,3学期になると「都市化都市問題」について学習する。小学校指導書・社会編に「社会科としては,社会生活についての知識を単に積み重ねていくのでなく,社会生活の意味について考える能力を伸ばすことをねらうものである」とあるように,都市化について学習する場合も,都市化についての事象や事実を単なる「ことば」として記憶できればよいとするのではなく,それらのもつ意味を,児童一人一人が自分の生活と結びつけて考え,その意味が「わかる」ようにならなければならない。
 例えば,福島市内で景観上からも都市化の著しい地区の小学校での授業を想定した場合,(1),(2)の地域教材を授業過程に位置づけて,都市化についての基礎的事実を具体的に確かめたり,考えたりできるよう配慮する必要があろう。その際に,児童の発達段階を考慮して,発問や解説にも工夫が必要である。(児童数の増加=その家族の住む家の増加→農地の宅地化の進行,父母や兄姉の通勤・通学→都心部への人や車の集中→都心部の交通問題など,4年生のとき学習した「ごみのしまつ」や「下水のしまつ」の成果と結びつけての環境問題の学習)

・中学校の場合,学習指導要領・社会編の地理的分野・目標(5)には,「地理的事象を適切な資料に基づいて多面的に考察し公正に判断しようとする能力を育てる」とあり,また,公民的分野・目標(4)には,「社会的事象を確実な資料に基づいて様々な角度から考察し,事実を正確にとらえ,公正に判断しようとする態度と能力を育てる」とある。その「適切・確実な資料」の中に,正しい手続きを経て地域教材として開発した地域資料も含まれている。
 例えば,地理的分野で「東京の都市問題」の多角的・具体的な思考や理解ができるように,「県都・福島市の都市問題」について学ばせる。その際に,開発した地域教材を授業過程に位置づけて,都市間題とは何かが具体的に「わかる」ようにする。その場合,中学2年生という発達段階を考慮して,生徒自らが資料を読みとり,そこから都市化に伴う諸問題の存在に気づくことができるように配慮する。更に,問題を追求する場面では,福島市の都心部の環境調査結果報告などの資料(略)を提示し,その読みを通して都市間題の理解の深化も図る。住宅地図(略)の分析によって,都心都と郊外の都市機能の差も読ませ,都心部と郊外間の人口移動の偏りの原因なども考えることができるようにする。

 ・高等学校学習指導要領解説・社会編・第7章
「現代社会」には,「この科目を具体的に生かすためには,生徒自身の課題に着目させるとともに,生徒自身がこれまで体験してきた事柄を大切にしながら,身近で具体的な事象を通して考えさせることにより現代社会の基本的な問題について理解させていくような指導の展開が大切となる」とある。「現代社会」においては,「都市化・都市問題」をテーマとする主題学習を行う場合も含めて,地域教材としての資料そのものを,グループごとの作業学習を通して,生徒の手で作成する場面も取り入れる。その作成過程で,事象や事実とそこにひそむ問題点などが「あぶり出し」のように浮き出てくることへの驚きや喜びを体験させたい。更に,都市化に伴う人間関係の変化,例えば,郊外に新築された家に住む核家族の生活について考えたり,郊外に住む旧住民と新住民相互の社会的関係を考えさせたりすることによって,将来多くの生徒が実生活で直面するであろう問題や課題について「いまの時点」での自分なりの考えをまとめることができるようにする。

3.おわりに

 身近な地域教材は,児童生徒の生活経験に強くかかわる内容をもつ場合が多いので,地域教材を取り入れた授業を行うことで彼らの日常生活に結びついた社会科学習を可能にする。抽象的な社会的事象を学習する場合も,身近で具体的な事柄と関連づけて学ぶため,その意味を興味と関心をもちながら具体的に理解できるようになるからである。
 わかりやすい社会科の授業を成立させるためにも,地域教材の活用が今後一層重要になると思われる。

 

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