福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -008/038page
中・高校教材
理科(物理領域)学習指導に用いるアナログ・データメモリ
及び溶液の誘電率や磁性体の透磁率比較装置について科学技術教育部 亘 理 尚 寛
1.はじめに
物理領域の実験では,物体の運動を記録したり,瞬間的な力のやりとりを測定したり,微小時間内の磁束の変化や電圧・電流の変化などを記録するなど,過渡現象に関するものが多い。
しかも,これを記録するには,一度電圧・電流などに変換して行うのが精度の上で得策である。
これを行う装置として,残光性CRTを用いたシンクロスコープやデジタルメモリ(筆者開発)があるが,最近のICの流通事情による入手難で,教具としてすぐに調達し難い状況にある。
そこで,入手し易いICを用いたアナログメモリを開発した。次に,溶液(流動パラフィン,メタ・パラ・オルトキシレンなど)の物質や分子構造の差異による誘電率の大きさを比較したり,強磁性体のみならず反磁性体の透磁率の比較などが簡単に行える装置を開発したので述べることにする。
2.アナログ・データメモリ
過渡現象の測定には,実験者にデータ読み取りの時間を与え得るよう,データをホールドさせなければならない。
サンプルホールドの仕方も,積分形平均値や,ピーク値,さらに測定値の2乗の平均値の平方根などの設定が可能であり,各々センサの特性に合わせて考慮することになる。
ここでは,実験を行うものとして次のテーマを設定した。
(1)運動の記述の学習の中で,瞬間の速度を測定すること。(中3・第一分野及び高校理科I)
(2)磁石の運動による誘導起電力の測定(中3・第一分野と高校・物理)
(3)コイルの断面積と誘導起電力及びローレンツ力。(高校・物理)
(4)過渡現象のデータサンプルホールド。(高校・物理)
このテーマにおいては,時定数をできるだけ小さくし,種々のピーク値を読みとるようにしたい。
しかし,入力インピーダンスを大きくしなければデータのサンプルホールドはでき難いので,時定数は大きくなってしまう。従って,双方とも満足できる値にすることが重要になる。
(1)のテーマの展開には,直接的に(2)の結果を用いて実験することになるので,速度と電圧の変換による実験ということになるが,データの与え方を決めておけば問題はない。
誘導起電力は下図のようになることが知られている。