福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -011/038page

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教 育 工 学

OHPの見直しと再活用のすすめ

経営研究部  山 田   明

1.はじめに

 最近,「OHPも流行が過ぎ去り,以前はど使われなくなった」という先生方の声を耳にすることがたびたびある。OHPのもつすぐれた機能や特性,さらには,学級にほぼ一台の割合で配置されている学校が,比較的多くなっている現状を顧みると大変残念である。
 新しい教育機器の導入も悪いことではないが,今こそ,授業のねらいを達成するために,OHPをはじめとする各種の現有教育機器の機能と特性を,見直す時期にきているのではないだろうか。
 よりよい授業の実践をめざす立場から,授業に効果的にはたらくOHP・TPの活用のあり方をさぐってみたい。

2.OHPを効果的に使うには

 昨年度,当教育センターは,県内の先生方を対象に,「OHP活用の現状」をさぐるためのアンケート調査を実施した。それによると,「OHP・TPに関する関心」の項目で,小学校の先生の88%,中学校の先生の80%が,「大いに関心がある」または「関心がある」の選択肢を選んでいる。
 このことは,授業におけるOHPの利用についての関心が,非常に高いことを物語っている。しかし,現状は,関心の高さとは別に,OHPの機能や特性を生かした利用のし方をしていないようにみえる。

 同じOHPを利用する場合でも,社会的事象を対象とする社会科と,自然現象を対象とする理科とでは,教科のもつねらい,指導内容,学び方に相違があるので,OHPと教科の特性という両者の兼ね合いを考えて利用していかなければならない。それができてはじめて,OHPの活用による授業の改善やよりよい授業の創造ができるのである。
 単に,OHPを利用すれば学習効果が上がるというものでもなく,実際の利用にあたっては,(1)指導のねらい,(2)OHPによって提示しようとする教材の中味,(3)児童生徒の実態の3点については,特に吟味しなければならない。

 「OHPを授業に効果的に活用する」ということは,授業のねらいを達成するために,教授・学習過程において,OHPのもつ機能や特性を,最大限に発揮させて使用することである。
 では,どのようにしたらOHPのもつ機能や特性を,発揮させることができるだろうか。そのためには,どのような工夫や配慮をしなければならないだろうか。OHP活用における基本的条件のいくつかを次にまとめてみる。

  1.  OHPを使わなければならない必然性があるのか。
  2.  教授・学習過程への位置づけ方が適切か。
  3.  TPの内容が指導のねらいにあっているか。
  4.  TPの内容が児童生徒の実態にあっているか。
  5.  OHPを使う際の教師の活動(発問・指示など)が適切か。
  6.  教室環境が十分整備されているか。
  7.  提示の際の,セット・操作のし方が適切か。
 これらの条件が,授業の中で総合的に機能してはじめて,OHPやTPの機能・特性が,最大限に発揮されたといえるのである。
 たとえば,OHPを使って授業をする際に,TPを作るのが面倒だからといって,別の先生が作ったTPを借りてきて授業をしたらどうなるだろう。TPは,たとえ一枚であっても,それを作った教師の教材観・指導観・児童生徒観が総合的に機能してでき上がるものである。だから,児童生徒が異なるうえに,教材観・指導観の異なる教師が,別の教師の作ったTPで授業をやろうと思っても,授業の成功に結びつかない場合が見られる。
 また,TPを作るのが面倒だからといって,本の資料を,そのままトラペンアップなどの複写機を利用して作り,授業に使用すると,文字が小さくなってしまい,見にくくなってしまいがちである。
 TPは,どの学習者にも見やすく,わかりやすい情報を伝達するものでなければならない。そうでなければ,どんなにすぐれた内容のTPであっても,TPのもつ教材としての価値は,半減してしまう。
 TPに書いた正方形が,スクリーンに台形に映っているにもかかわらず,「正方形は,四辺の長さが等しくて‥‥‥」などと説明しているようでは,無理にOHP・TPを使わないで,模造紙に書いた正方


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