福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -012/038page
形で説明するはうが,よっぽど教育工学的な使い方であるといえる。
3.すぐれたTPとは
OHPの効果的な活用は,OHP本体だけをいくら整備・充実しても十分とはいえない。OHPによって投影される教材,つまり,TPの整備・充実が,機器以上に重要なのである。
すぐれたTPは,学習者の興味・関心を引きつけ,学習意欲を喚起し,学習のねらいを効果的・効率的に達成する。
反対に,教材としての価値の乏しいTPは,学習そのものを混乱させ,授業をわき道にそらしてしまいがちである。
TPは,すぐれた内容を持ち,すぐれた技法によって作られ,すぐれた手法によって提示されてはじめて効果がある。それでは,TPが,すぐれた教材として備えていなければならない条件とはどんなことだろうか。
以上のような点が,条件として考えられる。この5つの条件について具体的な考察をくわえてみたい。
- 指導のねらいに即した教材であること。
- 学習者の実態をふまえ,学習者の理解や思考に即した教材であること。
- 適切な情報量をもった教材であること。
- 積極的な学習活動を促す教材であること。
- 未完成要素を含む教材であること。
1.の「指導のねらいに即した教材」ということは,TPだけでなくすべての教材についていえることである。ただ,教師と学習者の間に介在する教材がたくさんあるのに,この授業の,この場面では,TPでなければならないという場合にのみ,指導のねらいに即した教材として,TPの機能と特性を発揮させ,活用を図るのがよいと思われる。TPが指導のねらいに即していないと思ったら,無理をして使用しなくてもよいし,また,一時間の授業の中で,たった一枚の使用でも,効果を発揮する場合もある。
2.の「学習者の理解や思考に即した教材」であるということが,TPの内容や提示方法を決定する重要なポイントである。そのためには,日常の評価活動・教材研究・事前調査などを適切に行うことにより,指導内容のうち,理解しにくいところ,つまずくところ,見落してしまうところなどを,十分究明しておかなければならない。そのうえに立って,TPを最適な教材として使わなければ,機能は半減してしまうのである。
3.の「適切な情報量をもつ教材であること」は,情報過多のTPは,学習の成立を阻害する要因となることは,指摘されている。
自作TPは,授業前に作られることと,教師の「あれも,これも教えたい」という気持ちから,一般に,情報過多のTPになってしまいがちである。特に,合成法によって提示されるTPは,内容がふくらみ,学習者の受容能力を超える結果になってしまいがちなので,注意しなければならない。
情報量の適切さは,TPの枚数でなく,伝えようとする内容と学習者の受容能力によって決まるので,枚数の多少だけでは,結論を出すことはできない。4.の「積極的な学習活動を促す教材」とは,学習者に効果的にはたらき,学習への興味や関心、を促し,意欲を喚起し,活発な学習を誘発してくれるものである。この点,TPは,視覚にうったえて,内容の直観的理解や特徴的把握,事象と事象の関係的理解を効果的に促すものである。この特性を生かしたTPを作るには,文章表現のTPよりは,構造図,模式図,イラスト,グラフ,図表などを活用して作成するとよい。
5.の「未完成要素を含む教材」ということは,学習者の学習活動を,主体的なものにするということである。教科書の指導内容を,板書代替法によって,そっくり写しとったようなTPでなく,未完成な要素のままで提示されたTPを基に,教師と学習者の相互コミュニケーションを通して,書き加え,不必要なものを消し,構造化して,完成させていくことの大切さを教えている。
以上,TPが備えなければならない5つの基本的条件について述べてきたが,TPを自作する場合,これらの点に留意し,わかる授業や主体的学習の成立のために,OHP・TPの活用について再認識したいものである。
4.OHP・TPの機能と特性を生かした活用例
OHPは,電源を入れた時しか情報を学習者に提示できないし,また,スクリーンに投映された映像を長時間みていると,目が疲れるなどの欠点をもっている。反面,前述のようなすぐれた機能と特性をもっている。しかし,OHPは万能ではない。板書,掛図,スライド,映画などにも,それらのもつ固有