福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -014/038page

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教育相談

心を病(や)むからだ

−緊張性頭痛−

教育相談部  鴫 原   弥

 不登校(登校拒否)またはそれに近い学校不適応で来談する中・高校生の多くが頭痛を訴える。
 勿論頭痛だけではなく,多彩な自律神経症状を訴える場合が多いが,中には,頭痛がなければ登校できると訴えるものもある。この様な場合たいてい通院の経験を持ち,かなり長いこと薬を飲んだが頭痛がなくならないと訴える。医者ではCTスキャン,脳波などの検査を受けたが異常がなく緊張などによるといわれている場合が多い。
 こうした頭痛の多くが心因的背景の強い,いわゆる緊張性頭痛である。これは筋収縮性頭痛ともいわれ,その人の筋収縮性要因=ストレスなどにより筋緊張を起こしやすい身休的要因=緊張性性格が相互に関係し会っているものと考えられる。

1.症状

 この頭痛は,普通,後頭部と頂部に圧迫される感じやしめつけられる感じが持続的にあり,全体におさえつけちれるような痛みを感じることが多いようである。それと同時に筋肉痛や肩こりなどを訴え,時に頭の周囲をしめつけるような痛みがみられる。偏頭痛のようなズキズキした痛みではなく,どちらかというと鈍い持続性の痛みで,数日から数過も続くことがある。

2.誘因または原因

 この頭痛は,一般に家族性発現は少なく,誘因は,不自然な姿勢による肉体的過労や精神的負担特に中・高生の場合は,勉強,学校生活,親子関係などのまずさからくるストレスによる不安が多いといわれている。従って,これが不登校(登校拒否)の原因となることもある。
誘因または原因

3.性格特性

 中・高校生の時代は,特に不安な状態におちいりやすいもので,これを思春期不安というが,このような不安を上手に解消できない性格であり,あえていえば,強迫的で,執着性の強い=何事も,とことん最後まで完全にやるような=性格が多いといえる。

 この症状を訴える中・高校生の多くが,生育歴に問題を持っているようである。特に母親の性格や,しつけの態度が子供に大きな影響力を持っているようである。母親の性格で多いのが神経質で,現実逃避的な性格である。
 従って,子供が頭痛を訴えたとき,誘因などを考えるよりは,その症状に過度に反応し,こんなことでは学校に行けない,勉強がおくれるとおろおろしたり,早く直さなければと過保護になったりする。また,頭痛を起す以前から,過保護,過干渉気味で,いつももんくをいっていたりする。面接に当っても,子供の話まで横取りし,みんな答えるなど,子供が頭痛で悩んでいるのか母親が頭痛もちなのかわからなくなることが多い。
 更に,完全主義的に子育てをする母親は,子供の自主性を育てない場合が多く.思春期になって自立しようとしてもうまくそれが果せず,不安にとらわれ頭痛を起すこともある。
 しかし,その様な母子関係を長年にわたってみすごしてきたり,放置してきた父親の無責任さも見落してはならないであろう。

5.除外診断

 頭痛を起こす病気はたくさんあるので,心因性の強い頭痛であることを決定するためには,頭痛を訴える他の病気を除外しなければなりません。
 それは勿論医師の仕事であるが,ここにその主なものを上げてみる。
(1)片(偏)頭痛,これは反復性の頭痛で,原因は良くわかっていないが,家族性の要因が認められ,長期間続くことが多い。
(2)高血圧による頭痛,低血圧の頭痛
(3)脳血管障害による頭痛,片頭痛と間違いられることが多く,発作性の場合が多いようである。
(4)外傷性の頭痛,頭部外傷の後に訴えるもので,めまい,耳なり,記憶障害などをともなうことが多く,長期間持続する。
(5)その他の頭痛,目や耳,鼻など頭以外の慢性疾患によるもので,近視を知らないでいたための頭痛などがある。


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