福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -015/038page

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6.治療

 筋肉の異常な収縮による血管の圧迫や血液循環の悪化などによる痛みなので,まず医師による薬物治療を受けることであるが,それだけでは完治しないことが多い。
 次に心理療法であるが,これは心身の弛緩をはかるもので,行動療法が有効であり,特に,自律訓練法,ジュイコプソンの筋弛緩法,バイオフィードバックが効果的である。
 バイオフィードバックは,頭部の筋肉の緊張を筋電位で本人に示し(フィードバック)積極的に筋収縮をコントロールしようとするもので効果が大きい。
バイオフィードバック
 更に家庭では,緊張している筋肉を温める,もみはぐす,こりをとる軟膏をぬるなどして筋肉の収縮をやわらげる。次に軽い運動をするようにすすめできれば親もー緒にやる。こうしたことにより頭痛にあまり注意をはらわないようにすることが大事である。

7.事例 長期間にわたり間欠的に頭痛に悩むA子(高校1年)

(1)概要
 A子は高1で,小学校4年頃から頭痛を起すようになり,何度か病院で検査(CT,脳波など)を受けたがいつも異常なしであった。薬物の投与を受けたがあまり効果がないので困っている。

(2)家族

(3)心理検査

  a 本人
  ・ YG性格検査
A"型 平均的なタイプであるが下位因子についてみると周囲に合わせようとしすぎる点,何事も自分が中心になりたい点が目立つ。
  ・GAT(不安傾向検査)
心気的にからだの症状に注意しすぎる。多少自罰傾向がみられる。
  ・ EICA(親子関係診断尺度) 
父−統制(きびしいと感じている。) 
母−同一化・自律性否定(一体感を持ち子供の意志を尊重しない。)
  ・エゴグラム・チェック・リスト 
子供的で,大人的な自我が極めて未発達。
  b 母
  ・田研式親子関係診断テスト
甘やかし型であるが自信家で,父の子育てをまるで信用していない。
  ・エゴグラム・チェック・リスト,やさしいが理性に乏しく身勝手である。

(4)診断と指導
 母親に夫であるA子の父親への信頼感があまりないこともあって,母親とA子は極めて共生的であり,それを分離させる力が父親にないためと,A子自身の自我の未発達さにより,母親のストレスをA子が頭痛という形で身体化していると考えられる。従って,指導に当っては,母子分離をはかるために,両親の関係改善をはかるよう家族を指導するとともに,A子には,筋電位バイオフィードバック法を利用して治療したところ,約2カ月で症状が改善され,家庭内の人間関係も改善された。


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