福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -017/038page

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における具体的な時と場の言動の観察と理解に基づく適切な援助・指導によって,より豊かに醸成されるものであり,また,その中で相互の理解も深まるものである。その具体的な場と機会の一つとして,「短時間の学級の時間」を大切にし,日常における教師と児童生徒及び児童生徒同士の人間的な触れ合いを深めていけば,生活目標についても主体的に受けとめ,自らの生活の在り方として自主的に取り組むようにして行くことができると思われる。

(2)児童理解・生徒理解の深化
 一人一人の児童生徒の理解とそれに基づく適切な指導・援助のためには,児童生徒の個性・能力・適性・家庭環境などのはか,学級集団の中で各児童生徒が占める位置,あるいは,考え・行動などを多面的に理解し,個別的な指導を心がけることが大切である。そのためには,学力や身体的優劣などのように児童生徒の間に壁をつくりやすい場などよりも,むしろ本音が出やすい場の方が効果的であろう。したがって,比較的本音を出し合う場である「短時間の学級の時間」で,児童生徒への理解を深め,日常生活の在り方を具体的に指導していくことが重要である。

(3)生活習慣形成のための継続的な指導
 児童生徒がより望ましい集団生活をおくるためには,それに適応するための基本的な生活習慣と行動様式を身につけていることが大切である。そのためには,「適時性」を重視した日常における指導が,その場限りの指導に終わることなく,継続して指導されなければならない。生活目標として取りあげられる内容も,学級の実態及び個々の児童生徒の特性に応じ,継続して指導されなければ,指導の効果は期待できないし,目標達成も考えられない。すなわち,児童生徒の全生活をとおして根気強く積み重ねて指導に当たる熱意と努力なしには,生活目標は児童生徒の実際の生活に生きないのである。

(4)個の成長発達への援助
 生徒指導の究極のねらいは,自己実現を図る指導・援助をいかに行うかにある。すなわち,自分のなすべきことを明らかにとらえさせ,自分の能力等を最高度に発揮し,成就感・満足感・充実感を味わわせながら生き生きと生活させることを,教師として温かく見守り,援助してやることにある。したがって,生活目標も,一人一人の児童生徒の行動・態度のみでなく心の内面に目を向け,その実態と問題点を的確にとらえたうえで,指導の実践に当たらなければ,児童生徒の身につくことは考えられない。そのためには,児童生徒自身が教師から強いられたものとして生活目標をうけとめるのではなく,自己をみつめ,その反省に基づき自分自身がよりよくなろうとする態度が養われるよう援助しなければならない。

 これまでは,児童生徒一人一人の自主性や自発性を高め,ひいては自己実現ができるようにするための指導・援助のための配慮事項について述べてきたが,次に小学校における「帰りの会」の実践事例を紹介し,共に考えてみたい。

4.「帰りの会」の実践事例

 この実践事例は,昨年度,当教育センターの学校経営(B)講座に出席した,いわき市川部小学校の北郷嘉津子先生の実践研究を要約したものである。

(1)研究主題
 生活目標の徹底を図るための生徒指導の在り方

(2)“研究の趣旨とその見通し”について
 北郷先生は,この研究の趣旨の中で,児童に基本的な生活習慣を身につけさせるための生活目標を設定し,その指導に当たってきたが,児童の生活に有効に働いていなかった,と反省し,その要因として,具体的な指導の場や機会としての「帰りの会」が形式的になり,指導も一時的な抑えに過ぎないものになってしまったことと,生活目標の指導における教師の取り組み方及び児童自身の目標意識・実践が不十分であることをあげている。
 また,生活目標の徹底を図るためには,教師の指導性と児童の自主性の両面からの働きかけが必要であることに気づいたと述べている。
 そして,研究の見通しについては,「帰りの会」を形式的ではなく,内容のあるものにし,教師の指導を受けつつも,児童が主体となり,運営・実践に当たれば,生活目標に対する意識・関心も高まり,生活目標にせまることができるだろうと述べている。

(3)“研究の内容”について
 「帰りの会」の内容・運営の実態調査の結果を考察された中から,注目すべき部分を要約すると,


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