福島県教育センター所報ふくしま No.66(S59/1984.6) -018/038page

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1.「帰りの会」は,「基本的生活行動面の指導」や「自主性の育成」には大切である。しかし,2.児童にまかせきりでは,形式的で内容が之しくなり,運営がゆき詰まりになる。それをカバーするには,3.「帰りの会」を単に生活のしめくくりとするその日の反省だけこ終らせず,次の日の生活に結びつける必要がある。更に,4.児童が「帰りの会」を自主的に運営する中で,生活目標を「自分たちのもの」として意識できるよう指導すべきであると述べている。
 実践に当たっては,児童の自主性を尊重し,発達段階に応じて児童の創意を生かし,「帰りの会」の話し合いが実践に移していけるよう改善することに視点をおき,一日の生活を振り返り,自ら改めることにより集団生活への適応の仕方や協調的な生活態度を育てていく指導の時間として「帰りの会」を位置付けている。

(4)「帰りの会」の改善の実践例
 生活目標を,与えられたきまりではなく「自分たちのもの」として理解させるため,話し合いの方法(全体の傾向から原因を探る)として,次の図に示す矢印の手順を加え,改善を図っている点が注目される。この図に示す指導の過程をみると,次のようなことがわかる。
「帰りの会」の改善の実践例

 それは,「帰りの会」における話し合いの手順をはっきり4段階に分け,話し合いの進行に一貫性をもたせ,限られた時間内で円滑に話し合いが行われるよう工夫されていることである。先ず,第1段階では,問題をしぼることに重点がおかれ,児童各自がその日のめあてに対する自己評価を色別カードに記入し,次にそのカードの色で学級全体のめあてに対する傾向をとらえ,評価を通して問題を明らかにするのである。第2段階では,学級全体の傾向から原因を探るため,問題について,各児童が考えを出し合い,話し合って,真の原因が何であるかを探らせ,はっきりとらえさせようとすることをねらっているのである。第3段階では,原因に対する解決の手立てを考えさせ,「自分たちのもの」としての意識を深めさせることをねらいとしている。その結果,明日のめあてを設定することができ,第四段階で実践に移すことになる。
 このような「帰りの会」の話し合いを通して,児童の自主性が次第に養われ,基本的生活習慣が形成されていくのである。

(5)“実践の結果の考察”からいえること
 北郷先生は,「帰りの会」が軌道に乗るまではきめ細かい指導が必要であったが,児童の自主的な活動が活発に継続されるよう計画し,実践を通して改善・工夫を重ねることによって充実したものになり,集団生活への適応の仕方や協調的な態度も育ち,生活目標への意識・関心も高まってきていると述べている。
 この実践例は,児童が生活目標を単に学校のきまりや規則として与えられたもの,教師の一時的な抑えとしかとらえていなかった状況から,「自分たちのもの」という意識を持たせるようにしたことに特筆すべき点がある。それは生活目標を児童が実践できるよう具体化し,更に,その徹底を図るため「帰りの会」の話し合いの手順を改善し,一日の生活を直視させることによって基本的生活習慣の改善・形成を図ろうとした実践である。

5.おわりに

 生徒指導の機能は,「あらゆる場膿をとらえ」,「集団に」,そして「児童生徒一人一人に」作用しなければならない。短時間であっても,これらの日常の指導は,生徒指導の機能を十分に生かす場として重視していきたいものである。


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