福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -002/038page

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小・中・高教材

器械運動における小・中・高等学校の一貫性

−跳び箱運動の指導を例に−

教科教育部  深 谷 秀 三

1.はじめに

 体育(小学校),保健体育(中・高等学校)の学習指導要領で特徴的なことは,目標を小・中・高等学校一貫性の観点から,各学校段階で果たすべき役割を総括的に示し,内容は,目標との関連から学校や教師の創意を生かした指導ができるようにするために,従来の運動領域の整理統合や内容の精選を図り,基本的な事項(小学校,中学校),領域名や種目名(高等学校)を示している。従って,体育,保健体育の学習指導に際しては,これらの目標や内容について,小・中・高等学校一貫性の観点から系統的,発展的に把握し,児童生徒の発達的特性や運動の特性に基づいて指導することが大切である。

 ここでは,小・中・高等学校一貫性の観点から,器械運動の領域から跳び箱運動について系統性,発展性を構造的に明らかにしながら,運動の特性に基づいた楽しさにせまる学習指導のあり方について述べることにする。

2.器械運動の小・中・高一貫性の構造

(1)器械運動の領域区分と運動内容
 器械運動の領域は,児童生徒の発達の特性と運動の特性との関連において,十分配慮され整理統合が行われた(表1)。

表1 器械運動にかかわる領域
種別 小学校 中学校 高等学校
学年 1〜2年 3年 4〜6年 1〜2年 3年
領域 基本の運動 器械運動 個人的スポーツ
内容 ・固定施設や器具を使っての運動 ・器具を使っての運動 ・鉄棒運動
・マット運動
・跳び箱運動
器械運動
・跳び箱運動
2種目選択
 ・鉄棒運動
 ・マット運動
 ・平均台運動
・陸上・器械・水泳
(1又は2種目選択可)
器械運動
・マット運動
・鉄棒運動
・跳び箱運動
・平均台運動
・陸上・器械・水泳
(1又は2種目選択可)

この表をみると,小学校の第3学年までは,運動遊びを,用具を操作して精一杯運動を行い,運動の楽しさが追求できる「基本の運動」に領域が改められ,運動の基礎的能力を育てることとしている。第4学年からは,従前と同様に「器械運動」とし,克服的なスポーツとしての特性を一層明確にした。その内容は,運動の課題を明確にし,各種目の運動技能の能力に応じたものを選択できるようにしており,基礎的な運動技能を習得することに重点をおいている。中・高等学校では,運動の特性や課題に基づいた効果的な指導を行い,個人の技能が最高に発揮できるよう領域が「個人的スポーツ」と改められた。中学校では,運動の合理的実践方法を身につけ,運動能力や基礎的・基本的技能を養うこと。第3学年においては,陸上競技,器械運動又は水泳のうち1又は2を選択できるようにしてある。また,器械運動では,鉄棒運動,マット運動又は平均台運動のうちから2を選択できるようにしている。さらに,高等学校では,運動実践に関する科学的理解を深め,運動の技能を高めるとともに,生涯を通じて運動実践に必要な能力や態度を育てるようにしている。また,各学年において,器械運動,陸上競技及び水泳のうちから1又は2を選択して指導するようにしている。

 このことは,小学校では,器械運動固有の楽しさを未分化の状態からスポーツとして体験させ,本格的なスポーツは,中・高等学校になって経験させる。言わば,中学校と高等学校では個別化していく,あるいは,個人の欲求とか興味というものに深くかかわるものをぐんぐん伸ばしていく。いろいろなものを経験させて,どれが楽しいかということをわからせるまでが中学校で,楽しさを徹底的に追求させるのが選択制のある高等学校といえる。



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