福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -003/038page

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(2)跳び箱運動の特性と一貫性の構造
 跳び箱運動の特性は,人工的に作られた物的障害(跳び箱)へ挑戦し,それを克服して,できなかったことができるようになる,あまり上手でなかったのが,上手にできるようになった,など,一人一人が自分の能力にあった課題に取り組み,それがどの程度できるようになったかを楽しむ運動としてとらえる。また,個人的スポーツとしての特徴があり,それに即した運動が,小・中・高等学校一貫性に基づいて精選されたことにより,運動の技能内容の構造や関連を系統的にまとめることが容易になったといえる。跳び箱運動の技能の内容は,小学校・中学校の指導書,高等学校の解説書に例示されている跳び箱運動にかかわる技能内容を拾い出し,系統図にまとめたのが表2である。これをみると,児童生徒の能力,興味,意欲の適切な経験を通して,易から難へと新しいわざや高さへの挑戦などの目標や欲求をよび起こすように,内容が発展的,系統的に精選されていることがわかる。すなわち,小学校の第3学年までは,運動の組み合せによる総合的な取扱いを工夫することに重点を置き,第4学年からは,前述のように「器械運動」として独立する。内容は,腕立て開脚跳び,腕立て閉脚跳びを中心に,自己の能力に適した課題に挑戦できるように配列されている。中学校では,技能の優劣よりも個人の能力に応じた課題を解決していく過程での喜びや楽しさを経験させるように,跳び方の工夫に重点が置かれている。高等学校では,中学校に加えて,自己の能力を最高度に発揮させるための強い意志力と体力を身につけさせようとした内容になっている。しかし,これは,あくまでも指導の参考として例示されているもので,それぞれの学校や教師は,児童生徒の実態に応じて,創意工夫により指導計画を立て,実際の指導が行われなければならない。

 態度については,克服的スポーツの特性から,危険が伴いやすいので,安全面の配慮が必要であること,すなわち,器具の使用の仕方を工夫し,安全にしかも合理的に運動できることや,自己の能力に適した課題を設定して挑戦することが,小・中・高等学校一貫して示されている。

 また,自分の課題に向かって根気よく努力することや,グループで役割分担をし,互いに教え合ったり励まし合ったりする協力の仕方も大切なこととしている。

        表2 跳び箱運動における技能内容の系統図
高等学校
切り返し系 開脚跳びや閉脚跳びなど
回 転 系 逆位を経過して回転する
○ 単により高い障害を克服するだけでなく,着手後にどれだけ雄大に安定して跳べたかという出来映えなども問題にするので跳び方に重点をおく。
中学校    ↑
切り返し系  斜め跳び,水平跳び,仰向け跳びなど
回 転 系  台上前転や前方倒立回転跳びなど
○ 技能の中核は,着手の前後の技に条件を付け,いろいろな跳び方ができ,安定した姿勢で着地できること。
○ 同一の跳び方でも,姿勢の変化,着手位置,身体の振り上げ角度などに条件をつけること,また,跳び箱の置き方や高さなどの実施条件の変化などによって,跳び方が変わってくるので,これらの条件を工夫することが大切。
小学校    ↑
6年
腕立て開脚跳び  腕立て閉脚跳び  台上前転
(縦 高さ70〜80cm)(縦 高さ60〜70cm)(縦 高さ50〜60cm)
○ 大きな動作の腕立て跳び越しが調子よくできる。
5年      ↑
腕立て開脚跳び   腕立て閉脚跳び
(縦 高さ60〜70cm)(横 高さ50〜60cm)
○ 大きな動作で腕立て跳び越しができる。
4年      ↑
腕立て開脚跳び  腕立て閉脚跳び
(縦 高さ50〜60cm)(横 高さ40〜50cm)
○自己の能力に適した課題をもっての腕立て跳び越しができる。
基本の運動 ↑
3年    ↑
器具を使っての運動
○ 腕立て跳び上がり跳びおり
○ 腕立て開脚跳び

2年    ↑
固定施設や器具を使っての運動
○ 跳び箱でのまたぎ越し,踏み越し,腕立て跳び上がり跳びおり

1年    ↑
固定施設や器具を使っての運動
○ 跳び箱でのまたぎ越し,踏み越し,腕立て跳び上がり跳びおり


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