福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -004/038page
3 跳び箱運動の学習指導と評価
学習指導を適切に進めていくためには,児童生徒が自発的に運動に取り組み,.できるだけ主体的に学習することと教師の指導がはどよく調和した学習過程を工夫することが大切である。また,効果的な学習指導の方法をどのように工夫したらよいかは,学習指導の目標との関係で考えることが重要であり,運動の楽しさをどう学習させるかが問題である。
跳び箱運動の学習指導は,小・中・高等学校一貫して,新しいわざや跳び箱の高さなどを克服させるために,児童生徒一人一人に自己の力にあった課題をもたせ,その学習課題を克服させることに楽しさを味わわせることであり,その指導過程は,次のような流れが考えられる。
(1)導 入
ア 児童生徒に,何を練習するのかをはっきりさせ,課題を明確にする。
イ わざや高さへの挑戦のため,どのように練習するのか,跳び箱の配置や練習時間,グルーピングなど学習活動の仕方をわからせる。
ウ 跳び箱で,これから練習しようというわざや跳び箱の高さを決めさせる。
・ まず自分のできる跳び方で安全を確認させ,次に,自分のやってみたい課題を決めさせる。
・ 器械運動の特性から,自分のできないわざに挑戦させるようにする。
(2)展 開
ア 練習時間を多くとり,運動課題に果敢に挑戦させ,技能向上に向かって活発に学習をさせる。
イ 1回ごとに「今度の跳び方は,こう直そう。」とグループ内で教え合わせ,できない跳び方をまず安全にできるようねらいをもたせて練習させる。
ウ できたわざを,より高く,遠く,美しくできるように,あるいは,跳び箱の高さや踏み切り板との距離が若干違っても,失敗しないで確実にわざができるよう練習させる。
(3)終 末
ア 各グループ内で発表することを前提に自分のわざの仕上げの練習をさせ,発表会をする。
イ 児童生徒が新しいわざができた喜びが見られたか把握する。跳び箱運動は,中・高等学校になればなるほど,一人一人の課題が,スタート時に同一でなくなる。しかし,指導は,導入,展開,終末いずれの段階でも,児童生徒が自分なりの課題に常に意欲的に挑戟していけるような課題づくり,克服の喜びを味わう学習が自主的にできるよう技能の段階表を作成するなどを配慮してやることが必要である。
評価は,学習指導によって児童生徒がどのように変容したかを目標に照らして明らかにすることである。また,児童生徒自身が,自己評価や相互評価によって自己の特性や進歩の程度を知ることによってフィードバックしたり,自覚をもって学習活動に取り組むことである。跳び箱運動の評価の観点は,指導を通して具体的にどの程度楽しさがみられたか,また,できるようになったかを評価するので
(1)跳び箱運動の喜びや奏しさがみられたか。
(2)自分の力にあった課題を決めることができたか。
(3)課題に応じた練習の進め方が理解できたか。
(4)自分の課題がどれだけ達成できたか。
などの観点を具体的な評価尺度でもって評価し,指導にいかしていくことが大切である。4 おわりに
跳び箱運動を通して,小・中・高等学校の一貫性を明らかにしようと試みた。学習指導要領が,学校体育の中で,生涯を通じて運動を実践する態度や能力を養うことをねらいとしていることから,効果的な学習指導は,教師が一方的に教えるのではなく,一人一人の児童生徒に,自らの努力によって運動の楽しさ,喜びを味わわせることが大切である。そのためには,各運動の特性や児童生徒の実態を知るとともに,運動の系統性や発展性を明らかにして指導にあたることは一層大切になるであろう。
参考文献
- (1)小学校指導書 体育編 文 部 省
- (2)中学校指導書 保健休育編 文 部 省
- (3)高等学校学習指導要領解説 保健体育編 文 部 省
- (4)体育科教育法入門 大 修 館