福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -005/038page

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中学校教材

縫 い つ れ

科学技術教育部  吉 田 和 子

      

1.はじめに

 「被服」では,生徒が日常着用する被服の製作,被服整理及び手芸品の製作の実践活動を通して,被服構成の基本,着用目的と被服との関係,被服材料の性能及び手芸の特徴について理解させ,縫製の基礎技術を習得させるとともに,衣生活を快適にする能力を養うことを主な目標としている。
 被服1は,作業着の製作,被服2は,日常着の製作と被服整理,被服3は休養着及び手芸品の製作と学習のまとまりをもたせている。
 縫製の基礎技術であるミシン縫製について色々問題点が多いので考えてみた。

2.ミシン縫製の問題点

 縫製に未熟な生徒たちにとって,縫い目の調整は重要であるが,非常に手間がかかる作業のため,苦手である。ミシンを十分に使いこなす機会も少なく,質の高い既製品が出まわる中で被服製作をする目的をはっきり認識する必要がある。被服製作だけが学習のねらいでなく,製作の実践を通して,衣生活を快適にする能力を養うということを明確にとらえる必要がある。ただしもの作りの過程は,生活の基本を学ぶのに最もふさわしく,楽しみながら,創造性,合理性,経済性などがはぐくまれる。
 被服を美的に能率的に仕上げるためには,従来の経験的,伝授的方法から脱却して理論的,合理的に解明していくことが大切である。ミシンに対する不慣れ,機構の理解不足,手足の巧緻性が要求されることなどから,思うように望む針目が得られないものと考えられるが,良い縫い目に対する知識不足ということも考えられる。縫い目に対する評価力は経験的に得られるものであるが,縫製機会の少なくなった現在,日常,身につけている衣服の縫い目に改めて目を向けさせ,適切な縫い目調整は縫製の基本であり,完成作品の価値を高めるものであることを分からせたいものである。そこで,望ましい縫い目とは何かを考え,縫い目に要求される条件の中から縫いつれ(Seam Puckering)の問題を取り上げた。

3.縫いつれ

 縫いつれ(シーム・パッカリング)とは,縫いじわ(縫い目から発生しているしわ),縫いずれ(いさり,上下布のずれ),縫い縮みなど,広く解釈されていることばで,縫い目の外観上から総合的に判断されることばである。
 ところで合理的な縫い方を外観,機能の上から分析してみると下表のようになる。

    縫い方分析
縫い方分析
 これらの要素が満たされていれば,でき上った被服は最も合理的に縫製されたということができる。

縫いつれの例
・ステッチの周囲の小じわ
・縫製直後はきれいだったが,時間がたったら,縫い目にしわが出た。
・上布はきれいだが,下布は縫い目の周囲にしわが出ている。
・縫った時はきれいだったが,洗濯をしたら縫い目に小じわができた。
・脇ファスナーをつける時に,前布の脇線が波うつ。
 これらを構造的に考えてみると,一つの縫い目の長さとその問の布幅が一致しないため,布がひずみを起こし,しわとなっているもの,(図1),布の間に縫糸が強制的に押しこまれて,縫い目が伸ばされて,周囲との差から波打ちが起きる。また,布がひずみ,小じわとなるもの,押さえや送り機構により縫い目が伸ばされ波打ち現象となったものである。

(図2)
布のひずみによる縫いつれ 縫い目の伸び
図1 布のひずみによる縫いつれ 図2 縫い目の伸び
図1 図2


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