福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -006/038page
(1)縫いつれの発生要因
縫いつれの発生に作用する要因
縫いつれが発生する要因としては下表のように縫製に関与するすべての要因が挙げられ,これらが関係し合って起きるものであるといわれている。
- 糸張力
上糸や下糸の張力が大きい場合には,糸が引き伸ばされた状態で縫製することになり,縫製後,時間を経るにつれて元の長さに戻ろうとするため,縫い目間の布が縫糸によって引き締められ,縫いつれが発生する。特に合繊糸はこの現象が起こりやすいので,糸張力は緩めにする。- 送り歯と押さえ金
家庭用ミシンでは,上布は押さえ金によって垂直に圧力がかかり,下布は送り歯によって前方に押し出される。したがって,上布の送り量は下布の送り量より一般に小さくなり,その差から,下布は縫いつれを生ずる。(図3)
送り歯と押さえ金による縫いつれ
図3
特に,厚さの異なる布の縫合,例えば表地と裏地の場合などでは,裏地を下に重ねた場合には,縫いつれが起きやすいため,裏布は上にして縫合する。また,薄地縫製の際にも起こりやすいので,送り歯の高さを低くするようにする。- 針と針板
針が布を貴通する時には抵抗力が働く。太い針はど抵抗は大きく,針の上下動とともに,布も針と共に針板の針穴の中に引き込まれ,再び上昇することにより,布がひずみを起こし縫いつれとなる。したがって,細目の針を選択するようにし,薄地の場合には,布の下にあて紙(トレース紙などの薄紙)をあて,共に縫製し,後で取り除くようにする。この方法は送り歯の影響を少くする上でも効果的である。(図4)
図4
- 縫糸の太さ,針目数,布目方向
比較的密に織られた布は,本来,縫糸が入る間隙がない所に押し込まれるため,針目間の布のひずみを起こしたり,布によっては縫糸の入った分だけ布が引き伸ばされ,周囲の布との長さの差から縫いつれとなる。
したがって,縫糸は細く,針目数が少ない方が縫いつれは少ない。また一般に,織物のたての糸密度はよこに比べて多く,撚りの強い織糸が使われていることなどと関連して,縫いつれはたて方向の方が起きやすい。したがって,糸調子の調整は,たて布で行うようにする。(2)縫いつれの評価
縫いつれの評価は,縫い目の外観変化を肉眼によって判定し,その結果を等級で評価する方法と縫い目長さの変化を縫い縮み率として縫いつれの大小を判定する方法とがある。
- 等級付け
縫いつれの量により,作成した規定の標準見本と見くらべて1級から5級までの5段階で級付けする。
5級:現象がまったく発生していない。
4級:ほとんど発生していない。
3級:わずかに発生しているが,商品価値や作業性から問題はない。
2級:発生している。縫製条件または布地の改良が必要である。
1級:著しく発生している。