福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -009/038page

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4.副読本活用の手だて

 道徳の授業で,資料としての副読本を有効に活用していくため,次のようなことについて見直しをしたり,改善を因っていくことが必要であると考える。

(1)指導計画に位置付けをして利用する。
 ややもすると副読本を1ページから順に指導したりしがちだが,決して妥当な方法ではない。
 副読本を十分に読みこなした上で,次のような観点で選びぬいた資料を年間指導計画にきちんと位置付けしておかなければならない。

  1.  ねらいを達成するのにふさわしいか。
  2.  児童生徒の実態に合っているか。
  3.  地域の実情によく合っているか。
 すなわち,望ましい指導計画としては,ある出版社だけの副読本に限定することなく,現在,9社から出版されている副読本や文部省の指導資料集などを十分に検討し,選択することが望ましい。
 なぜなら,同じ内容であっても表現の細かな点で微妙な違いが見られるし,ねらいとする価値が同一でも,いろいろな読み物があるからである。
 さらに,副読本だけでなく,テレビ番組,スライドフイルムなど他の資料も組み合わせ,位置付けをしておかなければならない。
 こうして位置付けられた資料をできるだけ忠実に授業に活用し,実践後の反省をもとに,次年度の指導計画の改善を図っていかなければならない。

(2)児童生徒の実態に即した取り扱いをする。
 小学校低学年では,文字や読解に対する抵抗があるため,大きな活字,漫画的な さし絵 が多く使われているが,これらの第1印象がかえって邪魔になることもある。むしろ,教師の範読や録音したものを聞かせる方が,より豊かなイメージづくりや感動につながる場合が多い。また,粗筋をできるだけ早く把握させ,ねらいに結びつく考えを深め合う時間を確保するため,5Wの観点で要点を抜き書きしたカードや,場面のさし絵を準備しておき,次々と提示していく方法も効果がある。
 中学年から高学年へとすすむにつれて,内容も高度となり,理解に差が生じやすいが,読むだけで終わることがないよう,低学年と同じような取り扱いも含め工夫していかなければならない。
 中学生の中にも,読みとることが難しいため,道徳の授業がつまらないという声さえある。授業以前に十分なゆとりを持って読ませておき,その初発の感想から展開するとか,小学生用の読み物の中にも,使用のしかた次第で中学生にも活用できるものがあるという考えで資料の選択をしたりするなど,児童生徒の実態を的確にとらえ,対応していかなければならないと考える。

(3)他の方法の材料として生かす。
 副読本を単なる読み物資料としてだけ使用するのではなく,取り扱いの方法に変化をつけることにより,副読本のよりよい活用を図るべきである。
 たとえば,登場人物を拡大した切り抜き絵を作り動きを与えながら提示するとか,O.H.P.を利用し影絵として見せることで興味を持たせるという方法などが考えられる。また,紙芝居や一枚絵を自作し,利用することによって,読むだけとは違った新鮮な感動を引き起こすこともできる。
 役割演技のように,高学年になるにつれ難しくなる方法もあるが,中学生のなかに役割演技を喜んで行ったという実践報告もある。
 いずれにせよ,“読む”というワンパターンをさけ,児童生徒が喜んで意欲的に道徳の授業に参加をするように,いろいろな方法を併用していくことが大切であり,試みてはしいものである。

(4)その他
 前述したはかにも,資料の分析を行い,ねらいの確定,中心価値と関連価値の明確化,主人公の心の動向や葛藤場面の把握,発問や指導過程の吟味をすることなどが副読本活用の必要条件となる。

5.おわりに

 児童生徒が,資料から得たことを心のよりどころとして〜主人公のような立場に立たされた時どうするか〜なぜ,そうするのか〜そのための手順〜予想される困難にめげず,いかに切り開いていくか〜などについてじっくり考えさせ,人間らしい生き方を追究させる上で,読み物資料としての副読本の役割は,実に大きなはたらきをするものであることを忘れてはならない。
 また,資料には,多様な見方,考え方,扱い方があることを再認識し,資料の選択や活用にあたっては,教師が一人で悩まず,協力し合って実質的な検討を加え,さらに努力してほしいと考える。


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