福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -010/038page

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教育相談

問題性予測検査にみる 不 登 校 の 傾 向

教育相談郡  安 倍 治 男

はじめに

 従来,登校拒否といわれてきた症状については,各種の研究がなされ,体系化もされている。当所においても来所相談者のうち,登校拒否症状を訴える者は5割を占めている。それらを類型論,原因論,病態論などから総合的にみたとき,その症状が,従来みられた恐怖型,拒否型に,萎縮型,境界知能型と思われる症状もみられ,かならずしも「登校を拒否しない」面がある。そこで,当所では本年度より従来「登校拒否」と称していた症例を「不登校」と称することにした。
 学校現場では,不登校についてその症状を早期にとらえ,症状が顕在化しないうちに指導したいと努力をしているわけだが,現状は容易ではない。そこで,ひとつの試みとして現場でも使用できる検査(問題性予測検査)を手掛りとして,不登校生徒へのかかわり方をどのようにしたらよいか述べてみる。

1.問題性予測検査

 問題傾向を予測する検査(質問紙法)は,各種あるが,ここではTK式DAT(田研出版 Diagnostic Adjustment Testの略)を使用することとした。(以下DATという)
 DATは,大きく分けて,(1)適応傾向,(2)性格傾向,(3)規範逸脱傾向をみることができる質問紙による問題性予測検査である。
 適応傾向では,家庭不適応(F),学校不適応(S),自己不適応(E),対人不適応(H)の4つの問題傾向を予測する。
 また,性格傾向では,意志的側面(P1),感情的側面(P2),思考的側面(P3),の3つの性格傾向をみ,規範逸脱傾向では,規範逸脱性を,更に総合的にA・S・S反社会的問題傾向を予測する。
 反社会的問題傾向を除いて,危険性の段階を,C(危険性小),B(危険性やや大),A(危険性大)の3段階にパーセンタイルでみていく。

2.DATにみる問題傾向の差

 DATについて,A中学校の1学年の男子22名,女子20名(以下一般生徒という)に実施した傾向と当所で昭和58年度に実施したうち,不登校とみられた男子13名,女子10名(以下,不登校生徒という)の傾向を各項目のプロットの単純平均で比較してみた。
 問題傾向の差は,全般的にみて,男女とも不登校生徒の方が,適応傾向にはっきりとした差がみられ適応傾向に問題があることを示している。 それに対して,性格傾向ではそれはどの差はないが,不登校生徒の方が,一般生徒より低い方(危険性の小さい方)に位置している。

 (図1) DATにみる問題傾向の差 男子
(図1) DATにみる問題傾向の差 男子

 男子では,適応傾向のうち,危険性の段階からみれば,「危険性やや大」に入るものが,対人不適応家庭不適応傾向の二つある。特に対人不適応傾向が突出しており,家庭内における親子関係がしっくりしていない面がみられる。(図1)

 (図2) DATにみる問題傾向の差 女子
(図2) DATにみる問題傾向の差 女子

 女子では,適応傾向のうち,家庭不適応,学校不適応,自己不適応,対人不適応とも危険性やや大の


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