福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -011/038page
傾向を示している。中でも,特に家庭不適応の傾向が強く,家庭内における親子関係が,うまくいっていないことを示していると思われる。(図2)
性格傾向では,男女とも危険性の段階では,危険性小の傾向を示している。しかし,性格傾向をみる場合,この検査のみではわからない面が多いので,テストバッテリーとして,その他の性格検査を実施したものと照らし合わせながらみる必要がある。3.事 例
(1)主訴 不登校(登校拒否)
(2)対象 中学校1年生 女子 C子
(3)問題の概要
入学以来,泣いたり,また,食欲がなくなり食事を全くとらなくなったので,精神科医の診察を受けたが,症状が改善されず,5月10日から学校に行けなくなり,5月16日に来所した。(4)資料
1. YG性格検査 E型 自信がなくビクビクしているところがある。
2. GAT(不安傾向検査) 各種の不安傾向がみられる中で,特に対人不安傾向が強い。(5)指導方針
・ 当面,登校刺激をさけながら,起床,就寝を中心に生活のリズムをつくる。
・ 両親を中心に受容的に本人と接することにより,家庭における本人の心の安定をはかる。(6)経過とDATにみる変容
・ 7月22日までは,主に本人とのラポートづくりに費やされた感があるので,改めて継続的に治療関係を進めていくことを確かめたうえで,DATを実施した。(図3)
・ 5月16日以来,断続的に来所相談があった。
・ この間に食欲は出てきたが,両親に対し反抗的であり,怒りっぽかった。
・ 他人が家に来るとかくれてしまうことがあり他人に会いたくないと言い張った。
・ 特に担任との接触を避けたがった。◎ 7月22日の結果から・家庭内での家族間の不和をできるだけ無くし,父親が中心となって本人へのことばかけを多くし,本人の話をゆっくり聴くようにした。さらに,両親が一致した態度で接するように配慮した。
・ その結果,約一ケ月後には,目と目を合わせることができ笑い顔まで見せるようになった
・ さらに,起床を早めるようにした。
◎ 10月6日の結果から,今回に至るまでの変容から,さらに自主性を高めるため,一人で来所することと母の援助を少なくするようにした
・ その結果,母が賃作業に出たので,一人で来所するようになり,以前は来所するたびに買っていた雑誌も買わなくなった。また,勉強のことが気になり出した。
◎ 11月5日の結果から・各不適応傾向がみられなくなったので新たな準備への段階とみた。
・ 以前にはしなかった勉強の詰もするようになり,学校の話をしてもいやがらなくなった。そこで,形成化法により,段階的に登校に向けて行動するようにした。以後,4回の修正をしたが,12月20日に教室の中まで入ることができるようになった。その後,C子は登校を続けている。4.おわりに
問題性予測検査(DAT)は,できれば問題行動が顕在化する以前に実施され,個々の子どもたちの客観的な資料として,日常観察資料と合わせてどのように指導していったら良いかの指針を得るものとして使用するのがよい。事例のように治療の進み具合い,または,治療効果をみる資料としても使用することができる。
<参考文献>
- カウンセリングのすすめ方 小川捷之・山中康裕編 ライフサイエンスセンター
- カウンセリングの理論 国分康孝著 誠信書房
- サイコロジー 1983・9 サイエンス社