福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -012/038page
生徒指導
生徒指導における養護教諭との連携
経営研究部 松 本 喜 男
1.はじめに
生徒指導を円滑に,かつ効果的に進めるためには生徒一人一人についての理解が必要である。家庭の状況,学習状況,生活の状況など客観的なことはホームルーム担任が把握しているが,日々成長し変化していく生徒の姿は担任一人で十分理解することは難しい。
したがって,他の教師からの情報が必要になる。しかし,これら情報は,例えば教科担任であれば授業という一貫した指導の下でのフォーマルな姿の情報であって,生徒のありのままの姿とはいえない面がある。その点,養護教諭は保健室を訪れた個々の生徒のインフォーマルな姿を理解する機会が多く,ここでの理解の結果が望ましい生徒指導に生かされなければならない。このことから,高等学校における養護教諭と生徒指導との関連について述べてみたい。2.保健室の利用状況と今後の対応
保健室はいま,生徒の「駆けこみの場」となりつつあるということを聞くことがある。それは,生徒にとって一番甘えられる場所であると同時に養護教諭への信頼のあらわれと推察することができる。
次に,県立学校県南養護教員部会が発刊した昭和58年度「あゆみ」第8号の中から保健室の利用状況を挙げてみる。保健室の利用状況(8〜11月)
(保健相談を除く)
※延べ利用者数16,069人の内訳を示し,百分率は小数策二位以下四捨五入表からも明らかなように,調査対象校の生徒総数20,111人に対し,4か月間で保健室を利用した生徒は延べ16,069人と非常に多くの生徒が利用している。
更に,何らかの疾病で利用した生徒のはかに,保健相談と称して,身体に関することや,精神あるいは異性に関することなどで保健室を訪れている生徒は男子の場合18校生徒数9,985人の内357人,女子の場合19校10,126人の内632人である。これら,保健室の利用は疾病の場合は特に高い利用率となっている。ここで懸念されることは,表向きは何らかの疾病を理由としているが実際には教育活動からのエスケープ的なことで訪れている生徒もあるのではないかということである。いずれにしても,生徒と養護教諭との人間関係は,単に治療するという医者と患者のように単純なものではなく,そこには心のつながりや温かさがあるからこそ生徒は心を許すのである。それだけに生徒を広く多面的に理解することができるであろう。したがって,望ましい生徒指導充実のため,養護教諭と生徒指導部,あるいは全教師が密接な連携を図らなければならない。3.生徒指導と養護教諭のかかわり
名称こそことなっても校務分掌として,生徒指導全般を掌握する生徒指導部がある。この生徒指導部に養護教諭が所属しているかということを考えると養護教諭の大部分は職務の性格上保健体育部等に所属しているのが現状であろう。
養護教諭が生徒指導部に所属することの適否は,その学校の生徒指導の方針やあり方と無関係に論ずることはできないが,今こそ養護教諭の積極的な生徒指導へのかかわりが必要とされている時期でもある。生徒指導部に所属するかいなかは別として,組織を通した全体的な生徒指導に対して,その側面にあり,しかも個人を対象とした生徒指導を考えるならば,そこに大きくかかわるのが養護教諭の行う生徒指導でもあろう。
これら,実際の生徒指導とのかかわりにおいて,先ず,養護教諭自身が知り得た内容を全教師に知らせるべきか,秘密保持を原則として知らせないでおくべきかの問題であろう。
このような場に直面した場合,その判断は養護教諭自身の考えによって決まる。次に養護教諭と生徒指導との間に介在するいくつかの問題から秘密保持の問題とあわせて二つを取りあげてみたい。