福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -021/038page
個人研究紹介
地理への興味と関心を深め学習の成果を高める作業的学習の指導
−地図の作成を通して−
郡山市立郡山第二中学校教諭 鷲 田 洋
1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
美術の授業の補欠に出向いた時,生徒たちが彫塑の製作をしていた。実に伸び伸びと思い思いの創意工夫をこらしている姿はとても楽しそうであり,かつ意欲的であった。
一方,社会科を嫌い″とする生徒は毎年多い。しかも,その傾向は地理的分野に多く見られる<表1>。そこで,彫塑学習のように創り出す喜びを地理的分野の学習の中にも実現できないものかと考えた。学習指導要領においても「作業的学習を十分に取り入れる」ことを明示しているが,地理学習の指導過程の中に作業的学習を適切に位置づけることによって,作業という営みを通して学習意欲を喚起し,学習活動を活発にしていけるのではないかと考えた。(2)問題点
社会科学習の関心を見るために意識調査をしたところ<表1>のような結果を得た。
<表1>社会科学習に関する意識調査(数値%)
社会科学習への興味・関心 好 き ふつう きらい 30 39 31 歴史的分野への 26 40 24 地理的分野への 26 37 37
実に37%もの生徒が地理は嫌い″と意志表示している。そこで,その嫌いとする要因を教師側と生徒側からさぐってみた。(3)原因
以上のことから,次のような見通しをたてて解決を図った。
- 指導のあり方から
- ア 地理学習で特に重視されるべき作業的学習やグループでの学習に十分な指導がなされなかった。
- イ 知識の詰め込み的な地図学習が多く,地図を通して地域の変容を発見したり,楽しみを味わわせる工夫や手だてに欠けていた。
- ウ 資料を収集,選択し調べたことを発表させる表現活動の場が少なかった。
- エ ノート作りに工夫や指導が十分でなかった。
- 生徒の実態から
- ア 地理を暗記教科として,断片的な知識のとらえ方をしている。
- イ 地図の読みとりや地図作成についての機能が身についていない。
- ウ 地図帳を利用して積極的に調べたり考えようとするようすが見られない。
2.解決の見通し
(1)学習指導要領から
指導計画と作成の内容の取り扱いの項において,「地図を読み,かつ描くこと,統計資料その他の資料を処理し図表に表現すること,学習の成果をレポートすること」の作業的学習の重要性が強調されている。しかし,実際には教材過多による時間不足などから,作業的学習は十分に取り入れられているとは言えない。
そのために教材内容の精選,集約化が時に必要になってくる。
一つには,小・中・高の一貫性をはかり,むだ,重複を省く,二つには,生徒が確実に身につけるべき基礎的,基本的内容の精選を図ることである。
(2)学習意欲が旺盛であれば学習は活発になり,学力が向上することは多くの文献で知られているところであり,また経験するところである。
そこで,地理学習における指導の中核とも言える地図学習を通して指導過程の中に作業的学習を積極的に組み入れることによって興味・関心を喚起し,学習の成果を高めることができるのではないかと考えた。3.仮説
(1)仮説
学習過程の中に地図作成の作業を積極的に取り入れれば生徒の学習意欲を喚起することができ,地理への興味と関心を深め学習の成果を高めることができるであろう。
(1)毎時間1ページの略地図を描き入れた地図中心のノート作りを進める。
(2)単元ごとにトレーシングペーパーによって地図を作成し,その中に各地域の地理的事象を表現する。その際 着色 にくふうをこらす。
(2)仮説のための理論
- 「略地図中心のノート作り」