福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -025/038page
- 結果の考察
- ア.<表3>により,事後テストの結果を考察してみると,全般的に事後テストの伸びが著しいことがわかる。問題番号〔1〕は作業と読図であるが,これらはかなり時間をかけ,積極的に取り入れていったので高い正答率を得た。問題番号〔5〕の作業学習では,少し傾向を変えた作業であったが特色をよくとらえ,平均の有効度指数89.8%,把持率93%と高かった。
- イ.作業的学習を終えての,生徒の地理学習に対する興味,関心度の変容<表2>
- <表4>
- 「好き」と答えたものは14%の増加となり,「きらい」と答えたものは18%の減少をみた。このことは,地理学習への興味・関心の高まりが大変強くなったことと判断できる。その主な原因は 地図学習中心のノート作りとトレシングペーパーによる作業的学習の導入にあることが,次のアンケートから伺われる。
しかし,「きらい」とする19%の生徒については,個別による指導を十分に行い,到達基準などをもうけて,地理が好きになるような手だてをしていきたい。- <表3>アンケート1
- 現在の学習方法についてどう思いますか
- ○ 手・頭を良く使う授業であきない。
- ○ 地図学習に抵抗がなくなり,地図を措いて授業した方がわかりやすい。
- ○ トレーシングペーパーの作業的学習をやっていると,いつのまにか時間がすぎてしまう。いつも,もっと時間が欲しいと思う。
- <表4>アンケート2
- 現在の学習方法でどんな力が身につきましたか
- ○ 地図帳をよく見るようになり,略地図が気軽にかけるようになった。
- ○ 地図帳と毎日接していると,地図帳が私に語りかけてくるような気がする。
- ○ 予習する時間が多くなり,地理に対して集中力がでてきた。
- ○ 友だちと協力学習ができるようになり,成績ものびた。
- ○ 広告・チラシなどの略地図や公園などの見取り図をよく見るようになった。
(3)結論
- 近畿地方の事前テスト,事後テストの結果,有効度指数や生徒の感想文などからみて,一部分には変容がみられ,仮説は有効にはたらいたと認められる。
- しかし,個々の問題については,さらに継続していかなければならない必要を感じる。
- 作業的学習を指導過程の中に,適切に位置づけることにより,生徒たちの中に意欲的な取り組み方をする姿勢が目立ってきた。
- 地図帳や教科書の図表などを積極的に活用していくことによって調べる,まとめる,考える,発表するといった基本パターンが身につき学習課題に対しての追究力がでてきた。
- ノート作りの工夫(地図中心)やトレーシングペーパー( 裏 から着色)などを試みることによって,地図への興味・関心を深め,学習の成果を高めることができたと言える。
- 略地図の描き方は,学習の訓練によって抵抗をやわらげ,しかも正しい略地図が仕上げられるようになった。
5.反省と問題点
(1)学習指導要領の「作業的学習を十分に取り入れる」ことを具体化し,一時間の授業を組織して進めてきた。それが,生徒の地理への興味・関心を深め,学習の成果を高めることになったという確証はさらに,今後の継続研究をまたねばならない。
(2)地理的分野においては生徒たちが何よりも地図が好きなることが大切である。生徒たちが,地図を見て多くのことを読みとれれば,読みとれる程,授業は活気をおび,生徒が「のってくる」ことをこの研究を通して実感した。
(3)「なすことによって本質をつかむ」といわれる。生徒の手づくりの成果には,その生徒の考え方や態度・技能があらわれている。
さらに効率のあがる作業的学習を目指して今後も努力していきたい。