福島県教育センター所報ふくしま No.68(S59/1984.10) -004/038page

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 話し合いをする。(推敲)

8.本時のまとめをする。(評価)
   示し,推敲の仕方を身につけさせる。
・作品を発表し合い,相互批正させる。
・取材から推敲までの書き方がわかったか,
自己評価表を用いて評価させる。
・机間巡視を行い,気づいたことを批評し,
よく書けたことを賞賛してやる。

(4)指導例(A子の場合の記述の例)

  1.  題材決定(A子は身のまわりのものから,「筆入れ」を選び書くことにした。)

  2.  対象を見て書いた文章スケッチの例
     私の筆入れは青,筆入れの中には,鉛筆や消しゴムや定規が入っている。小学5年の私の誕生日に母が買ってくれた。手あかでよごれたシールが二枚はってある。

  3.  対象を見て,感じたこと,想像したことを書いた例
    筆入れは,口もきけない,耳も聞こえないが生きているようだ。私をいっも見守ってくれる。あるときは,お母さんのように,あるときは強いお父さんのように。

  4.  A子に対する記述についての個別指導の例
    (机間巡視をして指導したA子との会話から)
    T 「筆入れは生きている」−おもしろい表現だね。それはどうしてそう思ったのかな。
    S 筆入れは,ゆすぶると音が出るし,私が乱暴に扱うと机から飛び出すから。
    T なるほど。「筆入れは生きている」をもっとふくらませ書くといいね。
    T 書き出しには,何を書くのかな。
    S いろいろ迷っているんですが,誕生日に母から買ってもらったときのうれしかった気持ちを書いてもいいですか。
    T それがいいね。じゃ,書き出しも少し工夫して書いてごらん。

  5.  A子が仕上げた作品例(推敲)
     「A子,お母さんよりだいぶ大きくなったね。はい,お誕生日のプレゼントよ,おめでとう。」二年前母から買ってもらった私の筆入れ鉛筆や消しゴムがぎっしりつまっている。
     小さくゆするとカタカタ音を出す。乱暴に扱うと机から飛び出し逃げていってしまう。楽しいときは大きなおなかをふくらませ,「どんなに窮屈だって,鉛筆や消しゴムさんと一緒にいるほうがいい」という。口もきけない,動きもできない筆入れだが,まるで生きているようだ。

4.「ミニ作文」の授業を取り入れての反省

 この「ミニ作文」による訓練学習は,児童生徒に書くことを意識化させ,書く機会を多く与え,書くことを日常化,習慣化させるという点では効果があり,書く力が身につくように思われる。しかし,この訓練学習だけを継続していると,長い文章を書くことがおっくうになったり,自分ひとりで題材選定ができなかったりする危険性も含まれているので,今後の課題として更に研究を深めたい。

5.おわりに

 作文指導の目的は,限られたすぐれた書き手を生み出すことではなく,むしろ一人一人の児童生徒に書く喜びを持たせ,自分の思ったこと,感じたこと,考えたことを的確に表現できる児童生徒を育てることにあるように思われる。ここに取り上げた「ミニ作文」による訓練学習も,その方向にそって指導のねらいを明確化・焦点化させ,書く機会を多く与え,書くことへの抵抗感をなくし,書くことの日常化・習慣化をはかったものである。しかし,まだ数時間の指導をしたたげであるので,一人一人の表現力を十分身につけさせるまでにはいたっていないが,生徒たちの中には,「この学習は,さまざまな素材から自由に想像力をはたらかせて簡易に書けるようになった」などと,指導後の感想文で述べているものもいるので今後,作文の技術,方法の研究を更に深めることによっては,かなりの効果が期待できるであろう。


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