福島県教育センター所報ふくしま No.68(S59/1984.10) -007/038page

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5.考察

(1)クロモについての測定結果は表1及び,グラフ1に示したものであるが,1500Lxの部分でやや小さい値を示している。全体的には,ほぼ直線上にそれぞれの照度の測定値があり,照度が増すにしたがって気泡数,すなわち,光合成量が増していくようすがあらわれている。また,この直線が気泡数0の線と交わる点が補償点である。クロモの補償点はおよそ250Lxであると思われる。5000Lxの部分でやや小さい値を示しているが,これは光飽和点に近ずいているのではないかと思われる。しかし,100Wの電球で5000Lx以上の照度を得ようとすると,電球に近ずきすぎて,熟のために,水温が上昇するなどの弊害が起こり,測定ができなかった。

(2)オオカナダモについての測定結果は表1及び,グラフ2に示したものである。これは測定値にややばらつきが見られる。これはオオカナダモの茎が太いため,気泡の大きさが一定になりにくく,ばらつきがあったためと思われる。しかし,これらの点の平均的な位置に直線を引くことによって,照度と気泡数の関係,すなわち,照度と光合成量の関係を見ることができる。オオカナダモの補償点はおよそ300Lxであると思われる。5000Lxの部分でやや小さい値を示しているのは,やはり光飽和点に近いからではないかと思われる。

(3)マツモについての測定結果は表1及び,グラフ3に示したものである。気泡数が全体的に大きな値になっているが,これは,測定結果の所でも述べたように,茎が細いため非常に小さな気泡として放出されたためである。4000Lxでは大きめに,1000Lxでは小さめの値を示しているが,全体的には測定値が直線上に並んでいる。マツモの補償点は,クロモや,オオカナダモよりやや高く,およそ550Lxであると思われる。光飽和点も同様に高いのではないかと思われ,5000Lxの値もほぼ直線上に存在する。

(4)ミズヒキモについての測定結果は表1及びグラフ4に示したものである。4000Lxの部分でやや小さい値を示しているが,全体的には直線上に並んでいる。測定値が全体的に小さいのは,長い葉のため茎をあまり長くできずに葉の量を少なくして測定したためである。補償点はマツモよりも高く,およそ800Lxであると思われる。光飽和点もマツモと同様に高いのではないかと思われる。

 以上測定した各水草について述べたが,全体的に見ると測定値ははぼ直線上に並んでおり,照度と光合成量の関係を的確に示してくれるデーターが得られたと思う。
 クロモとオオカナダモは補償点及び,光飽和点が低く,マツモとミズヒキモは補償点及び,光飽和点が高いのは,クロモとオオカナダモは水中に沈んで生育しており,それだけ,弱い光でも成長できるような性質を持っているのに対して,マツモとミズヒキモは水面近くにあり,十分に日光に当たっていたものを採集して測定したためと思われる。

6.生徒実験の展開のしかたについて

 この実験は中学校においては,生物どうしのつながりのなかで,光合成量が光の強さにより変化することを理解させるための実験として考えたい。そのためには,光の強さ,すなわち,照度が変化すると光合成量が変化するという結果が得られれば十分であると思われる。この実験は,単位時間内に放出される気泡数をかぞえるという簡単な作業であるが,計時係と気泡数をかぞえる係というように,役割を分担して測定するようにすると良い。
 高等学校においては,光合成量と呼吸量の関係について,正確に測定したデーターをもとに,グラフを作成し,補償点を求めるまでの過程を実験を通して理解させたい,また,ここで作成したグラフを照度が0の点まで延長させることによって,理論的な呼吸量のおよその値を知ることができる。このことは,真の光合成量とみかけの光合成量(成長量)の関係について調べる教材としても利用できる。なお,レポートを提出させるなど,事後の指導も十分に行うようにしたい。

7.おわりに

 水草を用いて,放出される気泡数によって光合成量を測定する実験は,簡単な装置で比較的短時間に行うことができ,実験結果もはっきりあらわれる。そして,実験材料も身近な小川や他に生育する水草(エビモ,フサモ,タヌキモ,ヒルムシロなど)のほとんどのものが利用できる。


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