福島県教育センター所報ふくしま No.68(S59/1984.10) -014/038page
受講者の感想
教育工学講座を受講して
棚倉町立棚倉小学校教諭 添田 栄美子
≪はじめに≫
教育センター主催の講座への参加は初めての私。3泊4日という日程を長く感じ,受訴する前から緊張していました。その上,「教育工学」という苦手な類の講座であるということ,VTRとかアナライザーなど,どんなものかは知ってはいるものの手にしたことがないということなど,不安を増長させる材料ばかりでした。しかし,「勉強のために受講するのだ」と思いなおし,教育機器アレルギーをとり払うことを一番の目的とし参加したのでした。
≪講座の運営と内容について≫
研修は終始なごやかな雰囲気が流れる中で進められ,時間の配当もゆとりのあるものでした。時間に追われながら緊迫した面持ちで取り組まなくてはいけない場合もありますが,私にとっては焦りを感じることなく,ひとつのことに時間をかけてゆったりと取り組むことができたことをうれしく思います。また,講義と演習・実習がうまく組み合わされていてプログラムを組んだ先生方の配慮がうかがわれるものでした。
内容もビデオ教材制作とTP製作のふたつに絞られていたために混乱することなく.理解も深まり充実していたように思われます。でも,教育機器には多種多様のものがあり,それらすべてのものをこの3泊4日の日程の中で消化しようとするのは無理なことです。私の頭もきっと消化不良をおこしていたことでしょう。
・ビデオ教材の制作について
初めてテレビカメラなるものを手にし,いささか興奮ぎみでしたが,予想以上に楽しいものでした。
すっかりその気になっているディレクターを中心に企画から始まりました。VTRの特性を十分に生かすにはどのような教材がよいかとても迷いました。家庭科の「たまむすぴのしかた」とか「とび箱」などいろいろな案は出るのですが,限られた条件の中での制作ということもあり,容易に決定することはできませんでした。一単位時間のどの場面で,どのような使い方をするのか,なども同時に考え企画しなくてはなりません。何が何でもVTR,どんなものでもVTR,ではないのです。
タイトルが「のこぎりの使い方」にようやく決まり,いよいよ制作開始です。6人のスタッフが協力し合い制作を進めていくうちに台本の変更や修正も何度かありました。これも大切なことではないかと思いました。ライトの位置がちょっとずれただけで影ができてしまったり,カメラ操作をまちがえてやりなおしをしたり,予定時間をかなりオーバーし,発表の時間にすべり込みで間に合うという結果になってしまいました。しかし,最後まで自分たちの手で制作できるだけの時間は確保されていたので,楽しみながら研修をつむことができました。できればもう一度,同じような講座を開講していただき,今回得たものをさらに確かなものにしたいはどです。
・TP製作について
TPは簡単に製作でき,しかも材料は安値で容易に手に入れることができます。OHPは,今一番多く利用されている機器ではないでしょうか。けれども,その特性を十分に理解したうえで使っていたかどうかは疑問が残ります。単なる板書がわりに使っているのでは本当の活用とは言えないと思います。
研修では,まず全員が時計を作り,基本的な技法を学び,次いでそれぞれの目的に応じたTPを作り最後に発表し合いました。どの作品も「ああ,こんな方法もあるんだ」と感心させられるものばかりでした。また植田先生のいろいろな技法を取り入れた多くの参考作品をみせていただき勉強になりました。私もスクリーンに「花火」をあげてみたいと意欲が出てきました。「TPは凝ったものでなくてもいいと思う。授業の中で効果的に使えるもので,簡単に作れることが大切だ」という言葉を励みに製作していきたいと思いました。≪おわりに≫
教育機器に対するアレルギーは今回の講座でどうにか追い払うことができたようです。何事もそうだと思いますが,直接手にふれ体験してみることが大切だと痛感しました。新しいものに臆病になってはいけない。子どもたちによりよく理解してもらうためにはいろいろな工夫を試み,最も効果的な方法を取り入れることが大切であると,あらためて教えていただきました。ありがとうございました。