福島県教育センター所報ふくしま No.68(S59/1984.10) -019/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

イ 検証授業の事前と事後の意識の変容は,<表6>のとおりである。

     <表6> 意 識 の 変 容
<表6>意識の変容

  1. 結果の考察
    ア <表4>により事前・事後テストの結果を考察してみると,事前に比べて事後が著しく伸びている。特に文法・段落の中心内容と連接関係・全体の要旨の問題など,文章の構造を読み取る要所において,80%以上の伸び率を示している。特に,下位群の伸び率が高い。
     また,有効度指数の平均が86であったことから,検証授業の結果が良好であったと言える。ただし,段落の要約と論理構造の有効度指数は,他の問題に比べて低い。これは,文章を構造的に読む方法を初めて知った者も多く,この一教材の読解だけでは指導がゆき届かないことを示している。
    イ 把持率は平均89%で,定着の度合いが高い。ただし,文法・文と段落の連接関係・論理構造の分野が他と比べて低いのは,一度学習した構造的な読解方法も,反復練習を怠れば低下することを示している。
    ウ 意識面では,学習に対する自主性と興味の点が,わずかながら良い方向へ変容している。また,考える時間と友人の発言に対する満足度が著しく高まっている。これはかなりの時間的ゆとりと容認的雰囲気の中で学習が進められたことを表していると思う。

(3)結論

  1. 有効度指数の高さから言って,仮説は有効であったと言える。特に読解の基礎的方法をほとんど知らなかった下位群については,著しい効果を上げた。
  2. 自作課題集を班別の共同学習形態で作成させたことは,相互啓発の上で有効であった。自主性のかん養の点では.班のリーダーは向上したが,大部分の者は,割り当てられたから予習するという受け身の姿勢が変わらなかった。
  3. 説明的文章学習の必要性を全点が感じるようになった点に,進歩が認められる。

5.反省点と問題点

(1)文章を構造に即して論理的に読む方法は,説明的文章の読解力を向上させるうえで効果を上げ,大多数の生徒の支持を得た。しかし,2名の生徒が「興味が減退した。」と書いている点が反省させられる。興味喚起の点から言えば,内容吟味の段階で,生徒の日常生活に引き寄せた具体例を考えさせ,意見を交換させる時間を設ける必要があると思う。
(2)自主共同学習形態の授業は,多くの時間を要する。年間指導計画の進行と生徒の満足度とのバランスを図るには,難解教材の指導時に重点的に取り入れるようにしたい。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。