福島県教育センター所報ふくしま No.70(S60/1985.2) -002/042page
中学校教材
図形の証明を論理的に表現する能力を高める指導の工夫
−第2学年の単元「平行と合同」「平行四辺形」から−
教科教育部 原田伊佐雄
1.はじめに
本年度当教育センターで実施した,中学校数学講座における「学習指導上の諸問題」に関する研究協議の中で,第2学年の図形の証明指導についての間題や悩みが数多く出された。
具体的には,
・証明の必要感をどう指導したらよいか。
・証明の表現能力をつける指導はどうするか。
・証明の学習に意欲的に取り組ませる指導はどうしたらよいか,などといった内容のものであった。つまり,図形の証明は,演澤的な推論という抽象的な思考活動が中心であるために,教える側にとっては,指導の難しいところであるといえる。そこで,図形の証明に対する指導上の問題点を,証明の表現能カの面から考えてみると,ややもすると,証明の形式的な表記の指導だけにカを入れる傾向があったのではないかと考える。証明の必要感を持たせる指導,証明の考え方の指導,口頭表現から記述表現への段階的な指導など,生徒の証明能力を計画的に高める工夫が足りないように思われる。ここでは,図形の証明指導を4段階に分け,それぞれの段階について具体的な指導目標を設定し,その目標を達成していけば,表現能力が高まるだろうと考え,具体的な事例を通して,その指導の工夫を述べてみたい。
2.証明の表現能カを膏めるための方法
証明の表現能力を高めるための具体的な方法を次のように考えて設定した。
(1)証明のための行動目標の設定
証明指導のねらいを具体的に「証明のための行動目標」にまとめ,それらの達成を図れば,「学年目標(3)(図のA,B,C)のねらう能力が高まると考えた。これらの関係を次の図のように表した。
(2)指導の段階の設定
証明指導を4段階に分け,それぞれに指導目標を設定し,(1)の行動目標を各段階に位置づけた。
\ 指導目標 指導内容 行動 目標
第 一
段
階
証明らしいことを始める 段階で,図形の性質につい
てある判断をさせ,それの
正しい理由を考えさせる。
対角線の性質 平行線の性質
1 2
第 二
段
階
証明の必要感を知ること ができ,筋道を立てて,正しく
推論をしようとする態度を
持たせる。
三角形の内角 の和や外角,
多角形の内角
や外角の和
1 2
3
第 三
段
階
話し言葉に近いものでよ いから,図形の基本性質を
使って,証明を口頭で述べ
ることができるようにする。
図形の性質の 調べ方
合同の図形
3 5
6
7
第 四
段
階
仮定と結論を明確にさせ 推論の過程を「図の記号や
ゆえに,または」などの言葉を
用いて,わかりやすい表現に
記述できるようにする。
三角形の性質 平行四辺形の
性質,平行四
辺形になるた
めの条件
3 4
5
6
7