福島県教育センター所報ふくしま No.70(S60/1985.2) -003/042page

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3.指導の実際

ここでは,指導の段階の第二,三段階についての具体的な事例を述べることにする。

(1)証明の必要感を持たせる指導例(第二段階)

課題1

問題を提示し,ノートに正確な作図をさせる。

授業は全体の討議形式で,自由に発表させる。

T「さあ。∠BPCは何度になると思いますか。
P1「30゜だと思います。」

 ほとんどの生徒は,直観で求めているはずである。そこで,そうなる理由を考えさせる。
T「本当に30゜になるのかな。だれかにその理由を説明してもらいたいですね。」

P2「(黒板の図で)こことここが半分だから,Pのところも半分になると思うから30゜です。」
P3「30゜と予想して三角定規の30゜の角を当てたらぴったしだったから30゜だと思いました。」

 P2の説明では,できるだけ図の記号を使って,∠Aと∠ABCが二等分になって・・・・などのの言い方があることを軽くふれておくのもよい。

 P3の実測については,論理的な説明を要求しているときなので軽視されやすいが,実験・実測の大切さにも留意させながら,さらに,発問する。
T「P3さんの方法は,∠Aが70゜ではどうですか。」
P4「∠Aが60゜のときしか使えないです。」

∠Aの角度を変えた問題や角度を明示しない問題を出して,実験・実測の限界(短所)に気づかせることによって,証明の必要性を感じさせることができるところである。P5「先生。P2の説明はなんかスキッとしないのですが,もし,P2の説明が正しいとすれば,∠Aと∠ABCを3等分すれば∠Pは1/3になるのですか。」
T「P2君,P5はあなたの説明では納得できないでいるようですが,どうですか。」
P2「・・・・・」

 ここで,30゜である証明と一般化したP=1/n∠Aの証明の学習活動が展開されることになる。

 このように,本人には別に証明の必要を感じない事柄も,他人には納得できない点を指摘して,これをとりあげ,問題点を分析し,整理しながら証明の必要性を理解させていくことが大切であると思われる。また,証明の必要性を十分に理解させておくことが,これからの証明の学習意欲に大きく影響すると考えられるので,徹底した指導をしておく必要があろう。

 なお,課題を選ぷときは,生徒がなんらかの手段で結論を予想しやすいもので,その結論に対して,「どうして言えるか。」「いつでも言えるか。」という疑問に発展する課題であることが大切である。

(2)証明を口頭で述ぺさせる指ミロ例(第三段階)

 証明を口頭で述べさせるねらいは,まず,証明を書くという負担を生徒から取り除き,普通の話し言葉で正しい推論ができることにカ点をおくためと考える。証明の正しい道筋がわかって,相手を納得させる表現ができれば,証明ができる喜びにもなり,証明の記述にもスムーズに入れると思われる。生徒は,仮定から結論までの筋道を考えるのに,教科書に例示された証明のような順で考えるものと思っているものが多い。そこで,次に図示するような,結論から考えたり,仮定に戻ったり,いろいろな観点から考察して,証明をつくりあげる「証明の考え方」を指導しておくことが大切である。

仮定←○←△←口←結論
仮定→○→△←口←結論
仮定←○←△→口→結論
整理して筋道を立ててまとめる。
仮定→○→△→□→結論

課題2

課題を提示し,ノートに図を書かせる。図に仮定は青色,結論は赤色で印を記入させる。

(2人組で証明をつくりあげる学習活動例)

P1「まず,仮定はなんだっけ。」
P2「仮定は青で書いたからすぐ分かるよ。ここと


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