福島県教育センター所報ふくしま No.70(S60/1985.2) -008/042page
教育相談 教育相談におけるバウムテストの利用
−不登校児の診断と指導援助−教育相談部 高石寛治
1.はじめに
今年度の当教育相談部における来談ケース(昭和59年12月末日現在延1417件)について,その内容をみると,不登校(登校拒否)を主訴とする相談が実に49.8%を占め,前年同期比52件の増加である。
子供は,登校したいがどうしても行きたくないあるいは行けないで悩み,親もまた,学校へ行こうとしない子供をかかえて日夜不安な状態にある。一方,学校においては,その症状(態様や段階)を阜期に発見し,症状に応じた適切な指導をしたいと真剣な努カが展開されている。
当所では,来所相談において,的確な指導仮説を立て,児童生徒への適切な指導援助を進めていくために,生育歴に即して,生物的・心理的・社会的・実存的次元について,主訴の行為や行動の背景を可能な限り総合的にみて,より深い生徒理解に努めている。
バウムテストは,「実のなる木を1本かいてください。」という簡単な指示によって行われる投影法の中でも描画法に属する性格検査の一種である。他の性格検査と併用して,最近臨床場面や教育場面で多く用いられ注目されているものである。
ここでは,不登校児のバウム(樹木画)の特徴から,その問題行動をもつに至った心理的な背景を探り,その変容をとらえながら指導援助を進めた事例について述べてみる。
2.パウムテスト
(1)方法
1.準備-A4版(210x297mm)の特定の白紙,4Bの鉛筆,消しゴム。
2.指示-「実のなる木を1本かいてください」
(裏面に氏名,生年月日,実施年月日,性別,きき腕などを記入させる)
3.注意-時間・紙の使用方向・消しゴムの使用に制限はない。何(木の種類)を,どのように(形・大きさなど)かくかは被検者の全く自由である。被検者のイメージによる描画であり,写生をしたり,絵をみてかいたりしないよう留意する。また,指示にある「実のなる木」といっても,実をかくことを特別に誘導することでも禁止することでもない。裏面に,描画中の行動観察や作品についての質問事項をメモする。(2)解釈
バウムは,主として次の3つの側面から総合的に分析し,検査者の主観的解釈に陥らないよう注意する。
1.形態分析
バウムの形態は,発達指標的側面をもっている。すなわち,バウムに示される発達段階は,掻画(錯画)にはじまる描画が,象徴的段階を経て,図式画となり,さらに写実画の萌芽へと発達していく過程が認められる。また,バウムの各部分にも次のような形態上の発達的変遷がみられる。
・幹:1線幹→2線幹
・枝:1線水平枝→1線上向枝→2線枝
・実:掻画的→象徴画的→図式画的
・上下関係:宙吊り→紙下縁直立形態の吟味,検討にあたっては,診断表により該当項目のチェックを行うが,特にチェックする場合は,幹,樹冠部,地平線,根について次の点に留意してみることが大切である。
〔樹冠部〕
・1線幹か2線幹か
・基部のふくらみ
・幹の幅と長さ
・幹の上端処理
・平行幹,斜幹,曲