福島県教育センター所報ふくしま No.70(S60/1985.2) -012/042page
携の難しさが浮きぼりにされている。その連携の難しさとしては,種々考えられるが,ひとつには,」中・高の生徒指導には地域や諸機関などとの違携なしには進められないという性格があり,今後とも重要な課題として取り組んでいかなけれぱならないということである。なお,近隣校との連携が相対的に落ちこんでいないのは,高等学校の生徒指導が近隣校との連携なしには推進できないという傾向を持っているからであろう。もうひとつ,見落してならないのは,「生徒指導の事例について,学年,学校内で伝え合ったり,研修し合う」ことが十分でないとする回答が多いことである。また,「よくない」,「かなりよくない」の回答が40%にもなっているのは,中・高を通じて,「学級での生徒指導の様子を学年・学校の教職員に伝え合うふん囲気」の項だけである。これは,高等学校では,役割分担が明確になっている反面,教職員構成,教科担任制,学科制などからみて,生徒指導への取り組みを憂慮する意識があるためと思われる。
3.問題行動の5年後の予測
次に載せた表1は,図1と同じ調査の中で「問題行動の5年後の予測」について.県内の中学校・高等学校の教師138名から得られた結果である。
この調査結果をみて,初めに気がつくことはどの項目も「今よりやや増えている」,あるいは「今よりかなり増えている」を合わせると50%以上になることである。このように.問題行動のどれをとっても,「少なくなる」という見通しを持てないのは,現在,生徒指導の問題に直接たずさわっている教師たちが,現状に危機感を抱いているからであろう。
なお,「校内暴力」については,中・高ともにおよそ20%が「少しはへっている」という回答を示していて、注目に価する。これは,現在,各学校における「校内暴カ」に対する取り組みが真剣であり,その実績をふまえて,5年後はこの種の問題がかなりへっていくだろうという意識の表れと思われる。
さて,この調査結果から,5年後,特に重要な問題行動になるとみられる項目は「性非行」の増加と「非行の低年齢化」である。ちなみに,北海道立教育研究所が実施した同様の調査をみても、同じような結果がでている。
それでは,こうした問題行動を防止する上で,学校や教師はどう対処し,指導すれぱよいのだろうか。性非行の場合,生徒の心身の発違のアンバランスや性情報の氾濫などを背景とし,学校に不満のある生徒や欠損・崩域家庭の生徒などが不満の発散,性への好奇心を主な動機としている点からみて,徹底した性教育と学校へ適応できるよう個別的な指導援助を行うこと,問題のある家庭との連携を深めることなどが望まれる。非行の低年齢化は,近年の少年非行の特徴で大半は万引き,乗物盗みであるが,より深刻な非行への契機となる恐れがあり,軽視できない。その主な動機は,物品欲,自己顕示,うさぱらしなどであるから,平素,自己抑制カを養う必要がある。
総括的には,生徒指導体制の充実強化,学校と家庭・地域・関係機関との連携強化,生徒の実態に即した個別指導の徹底などを図り,早期発見,早期指導に努めることである。
4.おわりに
ここでは,調査結果の一部だけを掲げて考察を加えたが,各学校においては,生徒指導の現状における問題点や課題などについて,本稿と照合を試みられ,実態に即した生徒指導の充実や発展を図るために役立てていただけれぱ幸いである。