福島県教育センター所報ふくしま No.70(S60/1985.2) -024/042page

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研究実践校紹介

個々の子どもの特性に応じたコミュニケーション能力を高める指導

県立西郷擁護学校長 鈴木 廣司

○ はじめに

 昭和54年度より,擁護学校教育の義務制が施行されたが,就学児童生徒の障害は年々重度化・重複化しているのが現状である。したがって,従来の児童生徒を対象として,長い年月の間に修正・改善を重ね精選されてきた指導方法とは別の視点からの指導方法の体系化が必要となってくるのも擁護教育の課題の一つである。

 本校では昭和57,58年度の2か年にわたり,県教育委員会より「十度・重複障害教育」の研究指定を受け,標題の研究主題について研究を行ってきた。以下は,その概要についての紹介である。

1.研究の組織と計画

 研究指定と同時に,現職教育係を核として研究推進委員会を設置し研究組織・研究活動計画の立案及び基礎資料の収集にあたるとともに、各部門ごとの活動の連絡調整につとめた。

組織

57年度 58年度
T 4 ・研究主題の決定

・研究活動計画の立案

・研究組織の再編成

・二年次研究計画の検討

5 ・事例対象児の決定

・副主題の設定

◎研究の実践
6 ・研究グループの編成

・文献研究 ・校内研究会

・事例の研究 ・授業研究

・文献研究

7 ・各種研究会への参加

・先進校視察 ・一学期反省

・校内研究会

・各種委員会

U 8 ・各種研究委員会

・校内研究会 ・文献研究

◎研究公開資料作成準備
9 ◎研究実践(記録の検討)

・授業研究

・校内研究会

・事例研究原稿作成

10 ・校内研究会 ◎研究の公開
11 ・研究推進委員会 ・校内研究会(今後の計画)
12 ◎校内研究発表会 ・グループ別研究会
V 1 ・事例研究原稿作成 ◎研究報告書作成準備

・教育課程の改善検討

2 ・研究中間報告書作成 ◎研究総反省
3 ・同上報告

・一年次の反省

◎研究報告(追録等資料付)

・59年次の計画立案

2.主題設定の理由

 本校は,昭和49年度に開校した精神薄弱児の擁護学校である。昭和56年度までは,「言語能カを高める指導」「遊ぴをとおした言語指導」等,話しことぱにかかわる研究をすすめてきた。しかし,最近では児童生徒の障害が重度化して「語しことぱ」で自分の意思を伝達することのできない子どもが過半数をしめている。彼らの表現方法は多種多様で,そのことを読みとるためには,多くの時間と困難をともなうものである。意志の伝達はもちろん,子どもと子ども,子どもと教師とのコミュニケーションの成立が教室での指導のために基本的必要条件である。

 しかし「話しことば」を持たない個々の児童生徒も,わずかな表現の変化,行動(しぐさ)から自分の意志を伝達(送信)しようとしている。これを読みとり的確にこたえる(受信)ことではないかとの仮説のもとに,主題の「個々の子どものコミュニケーション能カを高める指導」を設定した。さらに,児童生徒の障害の多様化にともなって以下のように,部門別の副主題を設定し,研究内容の深化をはかると同時に,子どものよりよい変容をはかった。

1 小学部重度重複

  障害 ブロック

 自閉的傾向をもつ児童のコミュニケ

ーション行動の形成を図る指導

2 小学部普通

  ブロック

 文字信号系をとおしての行動体制の

強化・拡大・分化を図る指導

3 中学部重度重複

  障害 ブロック

 日常生活における交信行動の拡大を

図る指導

4 中学部普通

  ブロック

 日常生活への適応をめざすことばの

指導


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