福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -005/038page

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中教材

社会科における形成的テストの在り方

一歴史的分野「江戸幕府の成立と鎖国」を事例としてー

教科教育郡 遠原肇一

1 はじめに

社会科の究極的なねらいは,社会認識を高めることをとおして「公民的資質の基礎」を養うところにある。このねらいにせまるためには,基礎的・基本的事項をすべての児童生徒に身につけさせることができ,しかも一人一人が自らの個性を生かした追究活動ができる授業が行われなければならない。すなわち,「基礎・基本の完全習得」と「学習の個性化」という二つの要請に答えることのできる授業に改善することが大切である。

ここでは,中学校の社会科においてそうした授業を行うための一方策として,形成的テストの在り方について考えてみたい。

2 新しい教育評価観と形成的評価

近年,指導と評価は一体のものであるとする評価観が多くの教師に受け入れられている。すなわち,指導の途上で生徒の学習状況をチェックし,その結果を指導に生かす形成的評価を重視する考え方がそれである。

この形成的評価は,フイードバック・サイクルの長さから.次の2種類のものに分けられる。

 ●単位時間内で行われる形成的評価

極めて具体的な目標について,発問,挙手,観察,教育機器の使用等によってチェックし,直ちにフイードバックを図るもの。

 ●小単元レベルで行われる形成的評価

小単元の学習が一区切りついたところで評価を行い,その結果をその後の小単元指導に生かそうとするもの。

先に述べた形成的テストは,後者の形成的評価の具体的方法となるものである。

3 形成的テストの機能

形成的テストを取り入れた小単元の指導は,次の図のように展開される。

図 形成的テストを取り入れた小単元指導のモデル

図 形成的テストを取り入れた小単元指導のモデル

まず,ひとまとまりの授業が行われた後に,形成的テストが行われる。これは,ペーパーテストによって,基礎的・基本的目標についてのみ行われるものである。その結果,すべての目標を達成したと判断される生徒は,深化・発展学習へと進み,一つでも未達成の目標を持つ生徒は,補充的学習によってその欠陥の克服に努める。もちろん,補充的学習の終了者は,深化・発展学習へと進むこともできる。

このようにすれば,すべての基礎的・基本的目標を達成した生徒には,成就感を持たせ意欲的に次のステップへと進ませることができる。また,補充的学習に取り組む生徒の場合でも,自分がどんなところに努力すれば良いかがよく分かり,自覚的に学習に取りかかることが可能になる。

4 形成的テストを取り入れた小単元展開の実際

以上の考え方を歴史的分野の小単元「江戸幕府の成立と鎖国」にあてはめて考えてみると,小単元の展開のあらましは,次のページの表1のようになる。

はじめに.小単元の課題を明らかにし,予想をたて,解決のための方法が検討される。課題としては,たとえば「江戸幕府が,250年余の長い間にわたって日本を支配しえたのはなぜか。その秘密をさぐってみよう。」という具合いに生徒側の発想に立ったものにすることが大切である。こうした課題について,追究活動が数時間にわたって展開されるのであるが,ここで注意を要するのは


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