福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -009/038page

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いく。

(3)冷却器の製作,ガラス管大(内径22mm長さ20cm)ガラス管小(内径7mm長さ25cm),ゴム栓6号

(4)金網1枚では極めて突沸し易い。

(5)バーナーの炎の吹き消えに注意,反応式は次の通り

C 6 H 5 CH 3 +2KM n O 4

→C 6 H 5 COOK+2M n O 2 +KOH+H 2 O

(6)実験時間を短縮する。収量は少なくなる。

(7)濃塩酸は0.5〜0.6ml

4 バラニトロトルエンの酸化

三角フラスコ(50ml)にパラニトロトルエン (1) を1gとり,これに無水炭酸ナトリウム0.5gと過マンガン酸カリウムの飽和溶液を10ml加えて冷却器をとりつける。金網は2牧重ねて用い,加熱によってバラニトロトルエンが溶融したら冷却管を通して沸騰石を加え,極くおだやかに加熱を続ける。40分程して反応液に赤味が無くなったら加熱を止め,ガラス棒でこの液を1滴ろ紙につけてみる。 (2) 沈殿の周りにまだ赤紫色が残る時は更に加熱を続け,無色になったら三角フラスコを少時放冷後,更に水道水で冷却してから (3) これをろ過する。次に,ろ液を振りまぜながら濃塩酸を,もはや新たな沈殿が生じなくなるまで滴下し, (4) これをろ過する。沈殿を水で2度洗ってから試薬さじで試験管に移し,水を10ml程加えて加熱溶解させた後放冷して結晶の (5) 析出をみる。

注(1)淡黄色結晶,m.p54 C,b.P238 C,水に難溶

(2)反応式は次の通り

O 2 N-C 6 H 4 -CH 3 +2KM n O 4

→O 2 N-C 6 H 4 -COOK+2M n O 2 +KOH+H 2 O

(3)未反応のバラニトロトルエンを析出させる

(4)濃塩酸は0.6〜0.8ml

(5)ウロコ状結晶,m.P238 ℃,熱水に可溶

5 バラキシレンの酸化

三角フラスコにバラキシレン (1) を1mlとり,これに無水炭酸ナトリウム0.5gと過マンガン酸カリウムの飽和溶液を10ml加えて冷却器をとりつける。時々冷却管から沸騰石を加えながらおだやかに約60分間加熱を続け,反応液のスポットテストを行う。 (2) 発色があれば更に加熱するかあるいは亜硫酸ナトリウムで無色にして放冷した後これをろ過する。次にろ液を振りまぜながら濃塩酸を発泡が止むまで滴下し, (3) 生じた沈殿 (4) をろ別する。沈殿は水で数回洗ってからろ紙どと別の乾いたろ紙上に広げて乾燥させる。

注(1)m.P138 C,d 0.86,水に不溶

(2)反応式は次の通り

CH 3 -C 6 H 4 -CH 3 +2KM n O 4

→CH 3 -C 6 H 4 -COOK+2M n O 2 +KOH+H 2 O

(3)濃塩酸は約0.8ml

(4)バラトルイル酸 m.P181 C

   テレフクル酸m.P300 C(昇華),水に不溶

6 考察

アルカンやベンゼンは安定な物質で容易に酸化されないが,両者が結合して生じた芳香族炭化水素の側鎖部分は酸化され易くなる。例えば.メタンは過マンガン酸カリウムなどの酸化剤に対して安定であるがトルエンのメチル基は酸化される。

これはベンゼン環に置換基が入ることによって生じた分極のためと考えられ,側鎖にハロゲン原子や酸素原子のような電気陰性度の大きな原子が結合すれば分極の度合が増し,側鎖は一層酸化され易くなる。これをトルエンのメチル基の塩素置換体でみれば酸化され易さの序列は次の様になる。

C 6 H 5 CCl 3 >C 6 H 5 CHCl 2 >C 6 H 5 CH 2 Cl>C 6 H 5 CH 3

但しC 6 H 5 CCl 3 の側鎖の炭素C 6 H 5 COOHの同じ炭素の酸化状態と同じ(酸化数が同じ)なので更に酸化されることはなく,加水分解により安息香酸に変化する。

C 6 H 5 CCl 3 +2H 2 O→C 6 H 5 COOH+3HCl

それ故,この物質を除いた残りの化合物の塩素を酸素で置きかえると次の様になり

C 6 H 5 CHCl 2 →C 6 H 5 CHO

C 6 H 5 CH 2 Cl→C 6 H 5 CH 2 OH

それらの酸化され易さの順序は

C 6 H 5 CHO>C 6 H 5 CH 2 OH>C 6 H 5 CH 3

のようになる。


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