福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -011/038page

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道 徳

非行抑止と道徳教育のかかわり

経営研究部 渡部 悦夫

1 はじめに

昨今,テレビや新聞のニュースになるような児童生徒の非行は,だいぶ少なくなってきたようである。

しかし,小さな問題行動を含めると,依然としてかなりの小・中学校であとをたたないと思われる。

そのため,児童生徒の非行抑止とのかかわりで世間一般の道徳教育に対する関心や期待が一層大きくなってきている。

一方,教育現場における道徳教育,とりわけ,その中核ともいうべき道徳の時間の指導にあたっている学級担任から,「道徳の授業に十分力を注いでみても,望ましい道徳的実践にはなかなか結びつかないようだ」とか,「道徳教育が果たして非行の抑止に役立っているかどうかはよくわからない」などの声を聞くことがある。

たしかに非行の抑止が道徳教育の直接的な目的ではないが,密接な関連があると考える。

したがって,道徳教育が非行の抑止へどうかかわるかについて考えてみたい。

2 小学生から非行の兆しか……

中学生や高校生の非行については,よく論じられたり,調査結果も報告されてはいるが,小学生の非行については,さほど話題にものぼらないし,また,調査報告もあまり見かけない現状である。

そのため,小学校段階では,非行が起こっていないのではないかというようにとらえやすい。

しかし,非行は,中学校や高校になって突然に現れるものでは決してない。

(1),(2)の図表は,昭和56年に全国連合小学校長会が全国規模で調査した小学生の問題行動についてのものである。

調査からもわかるように.問題行動は,小学1年生からすでに多様化していることに注目したい。

(1)問題行動別割合  (全件数1,006件)

問題行動別割合

(2)学年別問題行動件数
学校数 296佼 児童数184,129人

               学年別 1 2 3 4 5 6
                 性別
問題行動  1 万引き 12 2 35 5 46 13 41 13 55 14 77 11 266 58
2 友だちへの暴力 9 2 14 0 18 0 21 2 27 0 47 3 136 7
3 金品の持ち出し 8 1 16 1 30 3 33 3 21 1 21 1 126 10
4 登校拒否 10 9 2 5 9 4 17 9 7 6 23 11 68 44
5 ぬすみ 13 1 12 0 9 3 15 1 26 3 19 0 94 8
6 家出や放浪 1 0 2 0 5 0 5 1 5 0 15 11 33 12
7 公共物の破損 4 0 7 1 3 0 11 1 5 0 12 0 42 2
8 ゆすりや強要 0 0 2 0 1 0 9 0 9 0 14 0 35 0
9 両親,家族への暴力 3 1 0 1 2 0 2 1 2 2 3 1 12 6
10 火あそび 4 0 1 0 2 0 2 0 0 0 4 0 13 0
11 教師への反抗,暴力 0 0 0 0 0 0 3 0 1 0 3 0 7 0
12 他校とのトラブル 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 5 0
13 その他 0 0 1 0 2 0 2 0 5 1 11 0 21 1
学年別計

();%

80

(0.27)

105

(0.33)

150

(0.47)

192

(0.62)

187

(0.64)

292

(0.97)

1,006

(0.55)

上表のように,非行などに走った児童は,全体の児童数の0.55%に過ぎない。


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