福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -017/038page
「かなりみられる」という回答があることは,重視しなければならない。なぜなら,ア〜カの各項目は,授業の妨害や拒否に結びつく行動であり,最も厳粛,真面目に取り組まなければならない授業の中で,このような行動は許されてはならないからである。児童生徒は,発達段階に沿って,小・中・高等学校へと学校生活に適応していくのであるから,初期から既にこのような傾向がみられることは重大である。
項目のウで教師の説明や級友の発言をひやかしたりする児童生徒や項目エ教師の指示を受け入れない児童生徒がみられるということは,教師と児童生徒あるいは児童生徒間の人間関係や教師の指導の在り方などが問題の根底にあると思われる。
次に,項目キの学習用具不携帯も児童生徒の授業に対する取り組みの基本にかかわることであり,不携帯がみられるという回答が多い点に注目したい。このことはまた,日常の基本的な行動様式がいまだ身についていないことの現れともみられる。
また, 項目のクでは,保健室に行きたがる児童生徒がみられるという回答がかなりあることから,単なる授業からの逃避だけではなく,学校生活全般にわたる不適応の傾向があると予想される。
ケ,コの2項目は,いずれも「少しみられる」と「かなりみられる」を合計した回答が他の項目に比べて多く,私語やおしゃべり,無気力など児童生徒の授業態度に気の緩みがあったり,学習への意欲が乏しい傾向の児童生徒のいることがうかがわれる。
これまで,学級・ホームルーム担任のとらえている授業中における児童生徒の学習態度に関することを述べたが,そのような状況の中で,授業を妨害したり拒否する児童生徒の指導について教師はどのようにしているかを調査した結果が次の表である。
ア,イ,ウの3項目は,いずれも「ときどきある」という回答が最も多い。「たびたびある」も含めてみると,項目イの学年会で話し合うという回答の方が,項目ウの職員会議で話し合う場合より多いことが注目される。
表 授業を妨害したり拒否する児童生徒の指導調査対象者 小学校174名,中学校66名,高等学校60名
調査項目 程度 たびたびある ときどきある あまりない 全くない 無答 ア 自校の他の教師と相談する 小 17% 41% 14% 16% 12% 中 36 48 5 8 3 高 22 36 22 12 8 イ 学年会で話し合う 小 14 53 12 11 9 中 38 50 6 3 3 高 22 49 12 10 7 ウ 職員会議で話し合う 小 6 43 28 15 8 中 15 54 23 5 3 高 7 40 33 13 7 エ 児童生徒と話し合う 小 23 39 12 14 13 中 50 29 12 6 3 高 30 39 13 10 8 オ 児童生徒が自発的に来談する 小 1 17 34 36 12 中 5 26 40 26 3 高 0 20 40 32 8 このことは,同学年の教師間で連携をはかるための話し合いがなされているからであって,児童生徒の実態をよく把握している同学年の教師が,お互いに率直な意見を出し合い,個々の児童生徒に最も適した指導を進めるための協力態勢がとりやすいからであると思われる。
次に,項目エは,授業を妨害・拒否する児童生徒と教師が意図的に話し合う機会をもっているかどうかの調査において,特に中学校では「たびたびある」という回答が多く,「ときどきある」という回答を含めると約80%になることはよろこばしい。このようにまず話し合う機会をもつことは児童生徒の内面的理解を深め,個性を的確にとらえ,その個性に応じた指導を進める上で有効である。
しかし,項目オでは,そのような問題のある児童生徒が,自ら学習や生活などの相談にくることは「あまりない」,あるいは「全くない」という回答が多い。この根底には,教師と児童生徒との